「手仕事」とは、機械ではなく人の手を使って行う種類の仕事のことを指します。実際に行われる作業の内容は多岐に渡り、大工から料理人まで、多様な仕事が手仕事として挙げられるでしょう。
大量消費の時代となった現在、手仕事や手仕事に従事する人の数は減少傾向にあると言えます。今回はそうした「手仕事」に特化して仕事をする職人の種類やその職業事情を紹介します。
日本の手仕事の種類その1【大工】
様々な建築物を作り出す「大工」は、代表的な手仕事のひとつです。民家からオフィスビルはもちろんのこと、橋や神社を建てるのも、大工の存在がなければ成り立たないでしょう。
大工の仕事は打ち合わせから入ります。どんな建物にするのか、発注元と綿密に打ち合わせをして、予算や期間とも合わせて検討していきます。この種類の仕事をするのは、大工の中でも経験年数が豊富で、現場の指揮を行える人物です。
実際に案件の内容がまとまったら、現場内での打ち合わせに入ります。業務内容の割り振りや人員の確認・指導を行い、現場業務に移行していきます。 日本の伝統的な建築方法である、木造建築の工程をチェックしてみましょう。
まずは建物の骨組みを作り、そのあと屋根の下地を作っていきます。サッシュを取り付けてから、外壁の下地を組んでいきます。
下地は建物の土台となり全体の強度にも結び付いてくるため、大工の中でも特に重要な仕事です。骨組みは大体2日程度で終えてしまいます。
その後床下地組みを行い、天井の下地や板を組んで張り、内壁作業に移行します。床材を施工し終えたら、次は壁の板を貼っていきます。
通常の建築物を作る以外に、特殊な施工を請け負う大工もいます。中でも「宮大工」は、日本の伝統に欠かせない存在です。神社や仏閣を作ったり、直したりするのを専門にしている大工です。
新しい建物を作るだけではなく、文化財や国宝など、貴重かつ伝統的な建物を元通りに修繕しなければなりません。 非常に繊細な技術が要求されるため、見習いの宮大工は掃除や片付け、カンナがけなどの下積みが仕事になります。
刃物を研ぎ、先輩宮大工の仕事を側で見ながら、こつこつと実力をつけていくのです。
日本の手仕事の種類その2【漁師】
漁業に携わる「漁師」も手仕事の一種です。島国である日本にとって、海産物は重要な資源です。漁師はそうした資源を獲得するために古くから欠かせない、重要な仕事なのです。
漁師の仕事は、大まかに3つの種類に分類することが出来ます。 ひとつが「沿岸漁業」です。沿岸部で行われる漁業で、基本的には日帰りです。収穫する魚の種類も漁法も多岐に渡っており、地域・業者・季節によっても変わってきます。
待ちの漁の代表例である定置網漁や群れを見つけて囲い込んでいくまき網漁をはじめとして、安定的な魚介類の収穫を実現する養殖、貝や海藻を回収する海女の仕事もここに含まれます。
もうひとつが、「沖合漁業」です。200海里水域以内で漁業を行います。漁法や魚の種類によっては、日帰りの場合もあれば、1カ月ほどに及ぶこともあります。イカやサンマ、マグロ、カツオ漁などが有名です。
そしてもうひとつが、「遠洋漁業」です。世界中の海が仕事の舞台となります。1年間にも及ぶ長期的な漁に出ることもあります。赤道付近のカツオ一本釣りや、ペルー沖で大規模な加工船を利用するイカ釣りなど、幅広い仕事が存在します。
これ以外に、川や湖の魚介類を取る仕事もあります。 水揚げした魚介類を選別し、売り物に出来るかどうか判断するのも漁師の仕事です。出荷の準備をしたり、各種道具の手入れをしたりと、漁に出ている以外でも様々な種類の準備業務が発生します。
日本の手仕事の種類その3【伝統工芸士】
古来の伝統を守り、未来に受け継いでいく「伝統工芸士」も、手仕事のひとつです。時代の変遷と共に技術を持った後継者が減少してしまい、絶滅の危機に瀕している伝統工芸も少なくありません。
伝統工芸士になるには、シビアな基準をクリアしなければなりません。国指定の伝統工芸品を作る仕事をしている人を対象に「伝統工芸品認定試験」を実施し、合格者に「伝統工芸士」の資格を与えています。
知識試験と実技試験を行って確かな実力を持った手仕事の従事者を見極め、保護しているのです。
伝統工芸士の『種類』は非常に豊富です。「織物」の分野では、新潟県の小千谷紬や、沖縄県の読谷山ミンサー、茨城県の結城紬、京都府の西陣織などが有名です。製糸や染色など、様々な技術が活躍しています。
「陶磁器」の分野では、愛知県の赤津焼や、栃木県の益子焼、滋賀県の信楽焼などが広く知られています。成形や加飾など部門が複数に分かれており、全国各地で発展しています。
「染色品」も、着物文化の根強い日本において、欠かせない種の伝統工芸でしょう。東京都の染小紋や、石川県の加賀友禅、京都府の京黒紋付き染めや、沖縄県の琉球びんかたも有名です。手描きから型染め、絞括などの部門があり、現代の洋服に転用されている技術もたくさんあります。
他にも、「人形」「漆器」「竹工品」「石工品」「木工品」「和紙」「文具」「仏壇」など、伝統工芸士の仕事の種類は非常に豊富です。