愛媛の老舗染物店「地細工紺屋 若松旗店」

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染物や旗製作に使われている伝統の技は、日本を始め世界中から注目を集めています。注文を受けてから職人がデザインから考え細かい手作業でつくりあげる旗・幟は、手間暇はかかりますがいつまでも古びず残りつづけます。今回は昔ながらの製法を使い完全手作業で旗類をつくっている老舗染物店、愛媛県八幡浜市の「地細工紺屋 若松旗店」を紹介します。

愛媛の老舗染物店「若松旗店」の魅力①

伝統的手法でつくる旗類

愛媛県の南予地方、八幡浜市の中心部に建つ昔ながらのお店。こちらが、江戸時代の文政5年(1822年)創業の染物店「若松旗店」です。こちらのお店は昔の八幡浜のメインストリートにあります。江戸時代末期に建った建物が、現在でも店舗兼作業場として使われています。

江戸時代は木綿が多く栽培され、木綿を染めるための藍染も発達しました。そして藍染をする紺屋が各地域にできました。紺屋は仕入れ紺屋や袢纏紺屋、幟紺屋など分業されていきましたが、その中でも何でも細工できる地元の紺屋を「地細工紺屋」と言ったそうです。

若松旗店では「筒描染(つつがきそめ)」という手法で、幟や神社の紋幕、旗、祭礼衣装(袢纏、法被、着物)などを制作しています。

愛媛の老舗染物店「若松旗店」の魅力

古民家再生の第一人者アレックス・カーの「篪庵」の幕に採用!

アメリカ人の東洋文化研究者アレックス・カー氏が、祖谷の古民家に惚れ込み修復しながら居住した家「篪庵(ちいおり)」。京都の町家再生など古民家再生の第一人者となったカー氏の原点です。この篪庵のリビングルームを装飾する紋幕も、若松旗店さんが依頼され制作しました。現在の篪庵は古民家の良さを残しつつ改装され、一棟全部貸す形でゲストを受け入れる宿泊施設にもなっています。

白い部分を真っ白に残すと古民家を飾るには浮くので、わざと柿渋で染めて古びた感じを出したそうです。このように若松旗店は知る人ぞ知る職人として内外で知られており、特殊な注文にも応え、クオリティの高い製作を行っています。

愛媛の老舗染物店「若松旗店」の魅力③

道後「飛鳥乃温泉」の壁を飾る!

道後に2017年9月26日にオープンした立ち寄り湯「飛鳥乃温泉」の個室休憩室の壁にも、若松商店の作品が飾られています。デザインから考えたため、制作には1年あまりかかりました。大国主命・少彦名命の「玉の石」伝説をテーマとしたオリジナル作品です。その他、西宮神社を飾る大漁旗や国立歴史民俗博物館所蔵品も納品しています。

筒描染とは?

筒描染とは、和紙に柿渋を塗って作った円錐形の筒型で描く手法。京友禅や加賀友禅でも同じ手法をとっています。この手間のかかる手法を今でも続けている職人は少なくなり、若松旗店のようにデザインから制作全般を引き受ける職人は全国でも数えるほどになっています。若松商店は、昔ながらの道具を用いて制作しています。

筒描染の作業工程は以下のようになっています。

①布を水につけて一旦縮ませ、乾燥させる。

②下絵を描く

③布にを張り、下絵に糊を置く→米ぬかかけ→裏水引→天日乾燥

④染める→乾燥

⑤かぶせ(染めた部分に糊をかけてマスキングする)

⑥背景染→自然乾燥

⑦色止め

⑧水洗い(糊を落とす)→乾燥

⑨隈取(白く残る糊部分に紅柄または黒鉛をぬる)

⑩裁断、縫製、仕立て

筒描染は複雑でとても手間のかかる行程で作られています。簡単なものでも1週間、デザインから考える特別な注文は1年以上かかります。

愛媛の老舗染物店「若松旗店」の新しい商品開発

こちらは手ぬぐい染用の型です。本来は全て受注生産ですが、イベント時に店舗を訪れた人がお土産に買っていけるものがあった方が良いということで制作されました。

お店にかかっているきれいな暖簾。こちらは、女の子の誕生の時や初節句のお祝い用に雛人形のかわりにおすすめしているそうです。収納が大変な雛人形の代わりに華やかな暖簾をお節句に飾れば場所も取りにくいうえ、出し入れも簡単です。この暖簾の前で花嫁写真を撮り、暖簾をくぐってお嫁に行くなんて感無量ですね。

同じように、端午の節句に飾る鯉のぼりなどの代わりになる掛け軸サイズの武者姿タペストリーもあります。鯉のぼりも昨今の住宅事情からは立てにくく、また雨が降るたびに下ろして家の中に入れなければなりませんが、女性の社会進出が進み、常に家に人がいるわけではないため現実的ではなくなりました。このタペストリーは外国の方に大人気で、お土産としても大変喜ばれています。

愛媛旅行の際は、老舗染物店「若松旗店」へ

いかがでしたか。愛媛県八幡浜市の「地細工紺屋 若松旗店」についてご紹介いたしました。地方にも優れた伝統工芸の職人の方がいて、伝統技術を守りながら精力的に制作されている姿に感動いたしました。

今回は、ちょうど制作している染物は水につけているところということで、実際染め付けの作業は見ることができませんでしたが、奥様がとても丁寧に、いろいろな話をして下さいました。お店を訪ねると、その時々の作業も見学できますので、愛媛を訪れた際には、足を運んでみてはいかがでしょうか。

文・写真/あかつき

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