千年以上の歴史 酒粕の香り漂う伝統食品「奈良漬」を紹介

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飴色に漬かった奈良漬は、口に含むと酒粕の得も言われる芳香が奈良漬独特の甘い味わいとともに広がる漬物です。手軽に作れる浅漬けが流行っていますが、何年も漬け込まれた奈良漬の風味は、年を追うごとに深みを増していき、色合いも変化します。奈良漬の歴史や食べ方、保存法についてお話しします。

平安時代から続く奈良漬の歴史

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奈良漬の歴史は非常に旧く、平安時代中期、930年頃に編纂された法典「延喜式(えんぎしき)」にも「粕漬瓜」という名前が出てきます。奈良漬発祥の地である奈良県では、奈良時代の長屋王の邸宅跡から「加須津毛(かすづけ)」と記された木簡が出土したことから、当時の貴族が奈良漬に近いものを食べていたことが明らかになっています。

つまり、奈良漬は1,300年以上も昔から作られていた食べ物であったのです。その後、現在の奈良市にある菩提山正暦寺で清酒の醸造が行われ、その時にできた酒粕に土地で採れた野菜を漬けたのですが、それが現代の奈良漬の原型になったと考えられています。

そして、江戸時代には白うりのほかナスやきゅうりも漬けられるようになったそうです。また、奈良で漢方医をしていた糸屋宗仙が、大阪夏の陣で出陣した徳川家康に奈良漬を上納したところ、たいそう気に入ったため、その後奈良漬は幕府への献上品として使われるようになりました。

また、東大寺にお参りする人たちの土産物としても人気を集め、やがて庶民の間に広まっていったといいます。奈良県で生産される一方、日本酒の醸造が盛んな現在の神戸市と、その周辺でも灘五郎という酒の良質な酒粕ができたことから、奈良漬が盛んに漬けられるようになりました。しかし、奈良漬は産地が変わっても名前は「奈良漬」のまま引き継がれています。

意外と知らない? 奈良漬に使われる野菜と製造方法

奈良漬に使われる野菜

奈良漬に使われる野菜は、本場奈良でも各地の産物が使われ、中国産の野菜が漬けられていることもあります。しかし、最近では奈良県産の野菜を使って作る奈良漬が注目されていて、奈良市や大和郡山市の農家が白瓜やきゅうりなど奈良漬に適した野菜の栽培を再び進めています。

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奈良漬の製造方法

奈良漬はうりやきゅうり以外にもスイカや大根、なすも使われます。珍しいところでは柿や玉ねぎ、にんじん、メロン、ごぼう、梅なども漬けられていて、その野菜によって酒粕に漬け込む熟成期間が変わります。瓜やきゅうりの場合2年半、スイカで3年というのですから、非常に長い期間漬けられていることが伺えます。

しかも、その間ただ漬けておくだけではなく、乳酸発酵が進みすぎてすっぱくならないように、また、色が真っ黒にならないように、何度も調整を繰り返して作られます。

奈良漬の食べ方と保存方法

奈良漬の食べ方

たっぷりの酒粕に使っている状態で販売されている奈良漬。水で洗わずに、酒粕をふきんなどでぬぐってから小口切りにします。水洗いすると酒の香りや奈良漬の風味、乳酸菌があらいながされてしまいます。また、日持ちも短くなるので、水洗いはしないでおきましょう。酒粕の香りが強いと感じる場合は、切ってからそのまま空気にさらしておくと、アルコール分が揮発するので食べやすくなります。また、味が濃いと思う方は、細かく刻んでお茶漬けにして食べるのもおすすめです。

奈良漬の保存方法

奈良漬は開封してしまうと、それから品質が変化していきます。そのため、すぐに食べない奈良漬は、酒粕で覆ってからラップでくるみ、保冷用のビニール袋に入れて冷蔵庫で保存します。それでも、熟成が進んで食味が変わってくるので、開封後は早めに食べきるのがおすすめです。チルド室や野菜室、冷凍室での保管には適しません。

ご飯のお供に、酒の肴にぴったりの奈良漬。何年も手塩にかけて熟成されて作られる、その時の重みを考えると、美味しさがさらに増していきます。残った酒粕を使って浅漬けの奈良漬も漬けられます。酒粕は捨てずに、チャレンジしてみてください。

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