30歳未経験でうどん職人の道へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

手打ちうどん田沼屋

二代目 田沼 健一(52)

<ひもかわうどんとは>

群馬県桐生市の郷土料理。諸説あるが、ひもかわうどんの歴史は江戸時代までさかのぼる。きしめんのルーツでもある芋川(今の愛知県刈谷市)うどんが訛ったものだと伝えられている。

最大の特徴は幅広い麺であるということ。その太さは店により15mmから100mm以上のものまである。幅は広いが厚みは1mm程度と薄く、つるんとしたのどごしも特徴のひとつ。

群馬県桐生市は『西の西陣、東の桐生』と呼ばれ、特産とされる絹織物で有名だ。そんな中、一際目立つ郷土料理がある。それがひもかわうどんである。

手打ちうどん田沼屋の二代目である田沼健一は商社から家業を継いだ異色の経歴の持ち主。そんな彼が惚れ込んだひもかわうどんの魅力を彼の人生と共に話を伺った。

30歳未経験でうどん職人に

「学生の頃は海外に憧れていて、大学卒業後は輸出入をしている商社に入社しました。その会社には6年ほど勤めましたが、30歳の時に自分の家業を継ぎました

当時は特に親から継げと言われているわけでもなく、むしろやりたくなければ無理にやることはないと言われていたという。ではなぜ転職を決意したのか。

昔は桐生市に100件以上うどん屋があって、町自体がそういう文化の町だったんですよね。だから小さい頃からいずれやるんだろうなという感覚があったんですよね

30歳にして手打ちうどんの田沼屋の二代目となり、職人として新たなスタートを切った田沼さん。当時の大変だったことについて聞いた。

技術習得は大変でしたね。全然教えてくれなかったですからね

30歳で職人の世界に入ると周りにはなかなか頼れない。大変ではあったが、意外にも辛いと思ったことはなかったという。

職人としてのこだわりとは

現在は52歳。家業を継いでから20年以上経ち、立派な職人になった田沼さん。こだわりについて聞いた。

地産地消という言葉が流行っていて、みんな地元の食材を使いたがるんですよね。でも僕は自分がおいしいと思った食材しか使わないですね

田沼屋の小麦は地元である群馬産ではなく、北海道産を使用しているそうだ。

職人といえば長年の経験で培った感覚で調理するイメージが強いと思いますが、感覚だとその日の体調によって、どうしてもずれが生じるんですよね」

「だから僕はデータをしっかり取っています。塩水においても季節ごとに濃度を変えていますから

様々なこだわりを答えてくれた。他にも他店に負けない強みが田沼屋にはあるという。

職人のイメージに縛られない

昔からの職人はかなり閉鎖的なんですよね。僕は新しいことにチャレンジすることが多くて、職人だからといってうどんを作るだけではなく、新商品の開発や東京の祭事などイベントごとにも積極的に参加しています

サラリーマンという経験があるからこそできることが田沼屋の強みだという。

※田沼屋のお土産品『一反御麺』

最後に田沼さんの今後の目標について聞いた。

ひもかわうどんを有名にしたい

「ネットやイベント活動を通してのPRが実ったのかわからないですけど、ここ数年でメディアもよく取り上げられることも多くなりました。この調子で自分の店を大きくすること、同時にひもかわうどんを有名にしたいですね」

実際、田沼屋にはテレビ、ラジオ、雑誌に取り上げられている実績がある。

PRを通してひもかわうどん全体の景気回復をめざしている。

インタビュアー後記

インタビュー後には、実際にひもかわうどんを食べさせて頂きました。幅の広い麺がつゆとよく絡み、薄い麺にも関わらず、つるっとしたのど越しとコシのしっかりした歯ごたえがありました。

コシの秘訣を聞くと『ゆですぎは恥じゃない、ゆで前は恥だ』という昔からある言葉を教えて頂きました。体験ではうどん粉をこねるところから作ることが出来る為、コシの秘密やうどんについての知識も増やすことができます。ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加