【お土産にオススメ】歴史の中で庶民が育んだ仙台駄菓子

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

いまでもデパートの地方菓子を売っているコーナーなどで販売されている駄菓子。町角から駄菓子屋さんはほとんど姿を消してしまいましたが、仙台では仙台駄菓子という昔ながらの駄菓子を作っているお店がたくさんあります。仙台駄菓子の歴史と代表的なお菓子をご紹介します。

仙台駄菓子の起源

仙台で駄菓子が本格的に作られるようになったのは、江戸時代に入ってからだと考えられています。それまでにも現在の「仙台駄菓子本舗熊谷屋」の一代目が元禄8年に駄菓子屋を創業したという記録があったそうですが、広く庶民の間に駄菓子が広まったのは、江戸や大阪、京都で商いが活発になり、ものを「買う」文化が浸透してからのことだと言われています。

また、駄菓子が仙台で盛んに作られるようになったのには、伊達政宗が慶長5年(1600年)に仙台に城下町を築いたことも影響しています。伊達政宗は千利休や古田織部など茶道に関わる人達と親交を深め、清水道閑を茶道頭として招きました。

茶道には菓子がつきものであるため、伊達政宗と茶道の関係は仙台駄菓子の発展に関係したと考えられています。また、仙台が米どころであったことも、余った米を使って菓子を作る背景になりました。

江戸時代に広まった駄菓子

江戸時代、砂糖は非常に貴重なものであり、また、武士が貧困で商家が富裕であったため、幕府はなんとかして庶民を抑圧しようとしていました。そして、その一環として庶民が白砂糖を使った菓子を食べることを禁じたのです。

そのため、菓子屋にも序列がつけられ、白砂糖を使った貴族が食べる菓子は上菓子司、水分が非常に少ない菓子を扱う干菓子屋、飴屋、駄菓子屋と区別されたのです。この頃庶民が食べることを許されたのは、精製されていない黒砂糖や米飴を使った駄菓子であり、雑菓子と呼ばれているものでした。しかし、一本で庶民にはこの雑菓子が非常に好まれ、多くの人が口にするようになっていったのです。


こうして庶民の間で駄菓子が広まっていったのですが、一方、駄菓子には嗜好品という以外に保存食としての役割もあったといいます。その昔、伊達藩では仙台糒(ほしいい)といって、米にキビや粟、とうもろこしなどの雑穀を混ぜた保存食が作られていました。

これが現代の「おこし」の原型になっているのですが、伊達藩では独自の、門外不出の製法で仙台糒を作り、江戸に参勤交代で詣でる時や野戦の時に携帯していたそうです。そして、その仙台糒のおこぼれが時折、家臣や町民に配られ、それをもとにおこしや胡麻、くるみなどを使った駄菓子が発案されたといいます。

明治時代に入って発展を遂げた菓子文化

江戸末期には砂糖の輸入が禁止され、国内で砂糖が作られるようになりました。そして、江戸深川に製糖所を作り、諸藩に製法を学ばせるなどしたことから、国内に砂糖が広まっていきました。

やがて、明治時代に封建制の解体や文明開化の訪れで人々の暮らしぶりが向上し、砂糖の輸入量も増えたため仙台の駄菓子屋の数も増えました。明治38年(1905年)の『仙台市職業別戸口』には、仙台の菓子屋は292戸あったと記されています。

こうして砂糖の広まりとともに全国に浸透した菓子文化ですが、駄菓子は地方色が非常に豊かな菓子なのです。和菓子と同じように季節によって色や形、味わいが異なります。地方都市に行くほど色が濃く、形は独特の形状をなし、風味の濃厚になっていきます。

また、もともとは雑菓子と言われた駄菓子ですが、東京より南、大阪、京都、九州ではそのまま雑菓子と呼ばれ、東京より北の地方では駄菓子と呼ばれるようになりました。そして、仙台以北の東北地方の駄菓子の特徴として、薄給で文化的にも発展が遅れたので、駄菓子は大きく腹持ちのするものが中心になったということもあります。

人気の駄菓子

仙台駄菓子は全部で60種類以上あるのではないか言われていますが、そのなかでも代表的なものをご紹介します。「くるみゆべし」は醤油と砂糖で甘辛く味付けした餅にくるみを混ぜて、じっくり蒸した四角い駄菓子です。

itukaさん(@ituka1616)がシェアした投稿


ねっとりとした餅の中に香ばしく、柔らかなくるみが入っていて、食感の違いも楽しめます。「きなこねじり」は、102℃くらいに熱した水飴にきな粉と九重タネという餅種を混ぜ、さらに手でこねて棒状にしたものを2枚重ねにして切り、ひとひねりして乾燥して作ります。

きな粉の香ばしい風味と九重タネのプチプチした食感が楽しいお菓子です。この他にもはったい粉に餡や砂糖、黒糖を入れて練り、丸く形作った「うさぎ玉」や白砂糖を溶かし、ハッカの風味をつけた「ハッカ」など、どこか懐かしい味わいがする駄菓子がたくさん作られています。

歴史を知って、より一層駄菓子の粋に味わう

ひとつひとつ丁寧に手作りされているという駄菓子。どんなに素敵なスイーツを食べても、駄菓子の懐かしい、ほっとする風味はまた別の美味しさがあります。江戸時代から伝わり、現在60種類以上もあるという仙台駄菓子。お取り寄せして食べてみるのもおすすめです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加