「つつがなく」の正しい意味と由来|使い方・類語・対義語もチェック

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【意味】 変わったことが起こらないことを喜ぶ言葉。
【由来】 病気や災難がないという「つつが」の意味から。
【類語】 無病息災
【対義語】 災厄・災難
【英訳】

「うさぎ追いしかの山」で始まるのは、あまりにも有名な唱歌「故郷」(ふるさと)ですが、この歌の2番は「いかにいます父母 つつがなしや友がき」で始まります。「友がき」は友達のことですが、それを補えば現代人にも、この歌詞の内容はわかるでしょう。

「(ふるさとの)友達はつつがなく過ごしているだろうか」という意味です。この「つつがなく」という言葉の意味は、もちろんだいたいは把握していることと思いますが、明確におわかりでしょうか?

つつがなくの意味


出典:写真AC

「つつがなく」は、「平穏無事で」という、変わったことが起こらないことを喜ぶ言葉です。漢字で書くと「恙なく」です。「恙」だけで「つつが」と読みますが、名詞だけだとワープロで変換されない場合が多いでしょう。

「恙」は、病気など災難を意味する言葉であって、災難がない状態を「つつがない」というわけです。そして「恙」だけで、ダニの一種「恙虫」(つつがむし)の意味もあります。「ツツガムシ病」を引き起こす、この虫の名前も、「つつがなく」という言葉に少し関係しています。

つつがなくの由来 ・言葉の背景


出典:フォト蔵

「つつがなく」の語源は、すでにご紹介したとおり、「つつが」つまり病気や災難がないという意味であって、ただそれだけのことです。ところが、つつがなくという言葉の誤った由来のほうが、なぜか広く知られているのです。

ツツガムシリケッチアを媒介して病気を引き起こすダニの一種「ツツガムシがいない」状態が、すなわち「つつがない」だというのです。この広く知られた誤解は、「つつが」自体に虫の名称以前の由来がある点からも、明白に間違っています。

ですが、語源というのは一筋縄にはいきません。多くの人が誤解しつつも、誤用のほうを腑に落ちる説明として理解している場合もしばしばあるからです。

ですから「つつがなく」という言葉についても、多くの人が「ツツガムシがいないのはいいことだ」という理解を、「つつがなく」という言葉に当てはめ理解してきたのかもしれないわけです。しかしながら、実のところはそうではありません

風土病として恐れられたツツガムシ病の原因がツツガムシにあると判明する以前は、病気は妖怪ツツガムシの仕業だと思われていたからです。この時点では、妖怪の姿は誰も知りません。19世紀になって、ダニによる感染症だと判明したのちに、その原因であるダニが、妖怪由来のツツガムシと名付けられたのです。

ですから「ダニがいない」という意味で「つつがなく」を理解していた人など最初からいないわけです。もっとも、妖怪ツツガムシがいないことを願う気持ちが言葉に含まれていたのだとしても、そこまでは誰も否定できないでしょう。

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