「あながち」の意味と使い方|「必ずしも」との違い・類語・対義語

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テレビニュースなどで評論家が、「彼が言っていることは、あながち間違いではない」と言っているのをよく耳にしますね。 ニュース以外でも、小説や随筆などの文学作品の中でも使われることが多いです。

上記の例文で使われている「あながち」という言葉の意味、皆さんはご存知でしょうか。 よく聞くことはあっても、詳しい意味を聞かれたら答えられないという方もいるかもしれませんね。

今回は、この「あながち」という言葉の意味や由来、使う場面、そして類義語・対義語など、深く掘り下げて見ていきたいと思います。

【意味】 (打消の語句を伴って)ものごとを断定しきれない気持ちや婉曲的な否定を表す。
【由来】 あながちの「あな」=「おのれ」、「あな」が勝つ状態、つまり自分が第一優先ということから。
【類語】 一概に、必ずしも、まんざら
【対義語】 絶対に~である(~ない)、必ず~である(~ない)
【英訳】 「 not necessarily 」「 not always 」「not altogether」「not wholly」

あながちの意味


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まず初めに、あながちの意味について、確認していきましょう。 あながちは、後ろに打消の語句(「~ない」など)を伴って、ものごとを断定しきれない気持ちや婉曲的な否定を表します。

例えば、 「この本は、あながちつまらないとは言えない」 と言った場合、この本は「少し面白い」ということになります。 はっきりと否定するのではなく、婉曲的に否定、もしくは少しの肯定を含ませるような言い方にするのが特徴です。

あながちの成り立ち


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平安時代から、所謂古文では、あながちという言葉は、「あながちなり」という形で使われ、以下の5つのような意味を持っていました。

・一途でひたむきであるさま。

・強引であるさま、無理やりであるさま。

・いきすぎであるさま、異常なほどに過剰なさま。・必ずしも~~ない

・決して、無暗に

上の5つのうち、現代でも使われているものに最も近いのが4番目の意味です。

上代日本語のあながちは、ゆとりを持てない様子を表していた様です。 あながちの「あな」は「おのれ」という意味で、「あな」が勝つ状態、つまり自分が第一優先ということで、「あながち」という言葉が生まれたとされています。漢字で書くとあながちは「強ち」、「強いる」などと同じような意味になってしまうのもわかりますね。

現代のあながちの用法が生まれたのは中世以降であり、そこから婉曲的に否定する「あながち~ない」という表現が広まっていきました。

あながちの使い方


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あながちという言葉は、「相手の意見や考えに100%同意はできないが、概ね賛成している」ということを表現する際に使えます。 例えば、仕事上の会議の場面で、部下に対して 「君のプランはあながち悪くないね」 と言えば、部下に対してそれとなく賛成しているという立場を示せます。

婉曲的な表現なので、相手を強く否定・肯定することなく自分の意見を伝えられるのがこの表現の強みです。 ただし、あながちはどちらかというと、目上の立場の人が目下の人に対して使う言葉です。 同じ立場同士の人が使い合うこともありますが、目下の人が目上の人に面と向かって使う言葉ではありません。

例えば、職場の上司の意見に7~8割程賛同している際、部下が上司に対して、 「部長のおっしゃっていることはあながち間違ってはいないです」 と言うのは、現代の日本社会においては、「立場をわきまえていない」というレッテルを貼られてしまいます。 敬語を使う相手には、あながちを使わないでおくのが無難でしょう。

あながちの類語・対義語


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あながちの類語は、「一概に、必ずしも、まんざら」などが挙げられます。 「まんざら」という言葉は、直後に打消の語句をつけて「まんざらでもない」という使い方もされます。 あながちの類義語は多岐に渡ります。部分否定の表現が多いというのは、ものごとの断定を避けるという日本人独特の気質の現れかもしれません。

あながちは、部分的に否定する言葉ですので、全体を否定する語句が対義語となります。「絶対に~である(~ない)、必ず~である(~ない)」などが主たる例です。

「あながち」と「必ずしも」の違いは?

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上の項目であながちの類義語について紹介しましたが、「必ずしも」と「あながち」が完全に同じ意味かというと、そうではありません。それは他の類義語に対しても同じことが言えます。

そこで、混同しがちな「あながち」と「必ずしも」との違いについて見ていきたいと思います。

まず、必ずしもはものごとの部分的な否定を表すのに対し、あながちはものごとの断定を避ける際に用いられます。例文を使って見てみましょう。

「金を持っているからと言って、必ずしも偉くはない」

この文の「必ずしも」の部分を、「あながち」に置き換えたらどうなるでしょうか。

「金を持っているからと言って、あながち偉くはない」

下の文はなんだか違和感がありますね。実は、このような文であながちを用いると違和感が生じるのは、この文が「断定」の文だからです。この2つの文について解説してみましょう。

上の必ずしもを用いた文では「金を持っている→偉い」を部分否定しています。言い換えると、「金を持っている人間が、全員偉いわけではない。例外はある。」ということになりますね。さきほど述べたように、必ずしもはものごとの部分的な否定を示すため、このように断定をしている文でも使えるというわけです。

それに対し下のあながちを用いた文では、「金を持っている→偉い」の断定ができないということを示しているかのようです。この文は末尾「~ない」を見るとわかるように、断定の文なので、あながちを用いると意味が通らなくなるというわけです。

かなりややこしい違いですが、例文を使ってみると少しは分かりやすくなったのではないでしょうか。難しい使い分けですが、あながちと必ずしもを使う際には注意したいですね。

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