京都の伝統野菜「山科なす」の歴史・特徴・レシピ

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画像提供:たべぷろ

出典元:賀茂なすはステーキに!京都での「なす」のおいしい食べ方(たべぷろ)

長い歴史を持つ京都の野菜

京の伝統野菜とは、京都府が定めた歴史ある京野菜のことを指します。京都府内で明治維新以前より生産されているものが京の伝統野菜として位置付けられ、その数は37品目となっています。その内、既に絶滅してしまった野菜が2品目あり、現存する野菜を生産者と消費者で協力して保存していくことが現在の課題となっています。

京の伝統野菜の中でも九条ねぎなどは今でこそ有名になってきていますが、中にはまだまだ知名度が低くその土地でくすぶっている野菜達も存在します。ここではそんな野菜達の中でも屈指の実力を誇る「山科なす」をご紹介していきます。

「山科なす」って?

正式には「京山科なす」といい、京都市東部に位置する山科の地で育てられてきたなすのことを山科なすと呼びます。元々は京都市左京区で生産されていた「もぎなす」という小型のなすを改良したものとされています。

元々は京都の主流ななすとして知られていましたが、流通が激減してからは地元民にもあまり知られていない存在となってしまいました。しかし伝統野菜として再び注目されることとなり、さらに山科なすをモチーフにしたゆるキャラ「もてなすくん」の尽力もあり、近年では勢いを盛り返してきています。

山科なすの特徴

光沢のある濃い紫色で、通常のなすよりも丸みを帯びており、卵のような形状をしています。旨味が多く種が少ないので、なすが好きな方はもちろん、苦手な方でも食べやすいものとなっています。

また、皮が薄く、果肉が柔らかくみずみずしいのも大きな特徴です。しかし、このデリケートさゆえ流通が困難となり生産数が低下することになりました。長距離輸送に向かず、現地か周辺の地でしか味わう機会がないという点が伸び悩む知名度の大きな要因です。

山科なすの歴史

起源は定かではないですが、左京区のもぎなすを大きく改良した説が有力となっています。

その質の高さから明治以降に各地へ広がり、昭和初期頃には京都に出回るなすの67割ほどを占めていましたが、実が繊細なため生産や輸送が難しく、他の丈夫な品種に押されて出荷数が激減し長年低迷していました。

しかし近年は、キズ物を減らし生産力を上げるために品種改良が施され、徐々に再興しつつあります。さらに府や地元をあげてそのブランド力をアピールし、少しずつ名が知れ渡ってきています。

山科なすの生産状況

元々は山科で生産されていた山科なすですが、近年では山科区で山科なすを取り扱っている農家がごく僅かとなってしまいました。現在では主に市内から離れた大山崎町や木津川市、京丹後市で栽培されています。

しかし、京都市によって山科なすの種子の保存が山科区の勧修寺にある農家に委託されており、今でも山科の地で守られ続けています。

山科なすを食べる

<旬の時期>

6月ごろから収穫が始まり、79月が食べごろとなります。

<栄養価>

山科なすに含まれるビタミンCやナスの色素であるナスニンは発がん物質や遺伝子を傷つける活性酸素の働きを抑えるため、がん予防における効果が期待できます。また、ミネラルが豊富で、血圧を下げるはたらきを持つカリウムを多く含んでいるので、夏バテ予防にも活躍します。

<オススメの食べ方レシピ>

山科なすは皮が薄いため歯切れが良く、漬物に最適ななすとして重宝されています。また、火を通すことで旨味が増すため煮物にもうってつけです。

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漬物

山科なす本来の味とみずみずしさを味わうことのできるオススメの食べ方です。浅漬けでもぬか漬けでも美味しく食べることができます。直接仕入れて自宅で漬けるのも良いですが、京都には独自のブランド力を誇る老舗の漬物屋が多く存在するので、そちらで出来合いのものを購入するという手もあります。

ニシンとなすの炊き合わせ

こちらの料理は京都の定番のおばんざいで「にしんなす」と呼ばれています。

さっぱりとしたなすと甘辛いにしんがお互いの旨味を引き立て、抜群のコンビネーションを発揮しています。

この組み合わせは、ただ美味しいだけでなく身体にも大きなメリットを与えてくれます。なすには身体を冷やす効果がありますが、にしんは逆に身体を温める効果を持つので、なすによって身体を冷やしすぎないように組み合わせられているのです。

焼きなす

焼いて食べるというシンプルな食べ方ですが、それゆえに山科なすが持つ旨味や柔らかさを全て堪能することができます。果肉がきめ細かく種が少ないので、味とともに舌触りまで楽しむことができます。醤油やポン酢などをかけていただきましょう。

ブランドを味わう

例えば、京都の料亭で山科なすを使った料理が出てきたとして、「山科なすってなんだろう?」と思って食べるのか「これが山科なすか!」と思って食べるのかでは味わい深さが桁違いになります。特徴や背景を知った上で芽生える「少し特別ななすを食べている」という意識がより一層あなたの生活を豊かにしていくことでしょう。

また、京都に来る機会が無いから通販で購入したいという方やお土産として持って帰りたいという方は、生野菜は持ち出せずとも漬物などの加工食品で十分に素材の味を楽しむことができます。

是非、知識を踏まえた上で実際に味わい、山科なすの良さに触れてみてください。

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