株式会社庄司政吉商店
和田謙太郎(37) / 漁撈長
<漁師とは>
漁業を職業とし生活を立てている人のことを言うが、漁業といっても大きく分けて3種類のやり方が存在する。株式会社庄司政吉商店では沿岸漁業に従事していて、なかでも定置網漁を得意とし、”待ちの漁”と呼ばれている。
名前の通り網を設置し、魚を待つ為、マグロやイワシ、なかにはサメなど様々な種類の魚を獲れることが特徴で、海の恵みと集獲の喜びを強く体感できる漁である。
株式会社庄司政吉商店は千葉県南房総市に位置し、東京圏からはアクアライン開通から様々な道路が開通し、アクセスも良好。そして南房総市の一番の魅力は海と山に囲まれ、色とりどりの花畑が季節と共に景観を変えてくれる自然豊かな地というとこだろう。
事務所へ到着すると、そこには漁から戻ってきた和田さんが待っていた。和田さんは漁撈長(漁労長)船の最高責任者だ。どんな人生を歩んできたのか話を伺った。
きっかけは漁師体験
「地元が鴨川で、周りに海がある環境で育ったので、いつも漁師を見ていてかっこいいなと思ってた。それで高校三年生の時に一度、漁師体験させてもらって、入社を決めました」
「海に出て魚を獲ると網には何十トンと魚がいて、網を引き上げた時の感動は凄まじかったですよ。何て言うのかな、スカっとする気持ちになりましたね」
言葉では表せないほどの感動が漁師にはあるのだという。
一回の漁で獲れる魚は多いときで60トン、70トン程度。1匹をだいたい300グラムだとすると20万匹相当になるそうだ。
漁師の一日
漁師の一日は早い。話を聞くと漁をすることだけが仕事ではないという。漁師の仕事の流れを聞いた。
「夏だと朝の4時に集合して、獲った魚を氷締めする為に氷を船に積んでから海へ出港します。3km先に張ってある定置網が設置してあるところに行って、網を船に引き上げていきます。うちの場合は2ヵ所あるので、移動してもう一個の網も引き上げます。7時前には陸に戻り、そこから1時間半くらいかけて魚の選別。魚を種類別にわける作業ですね。それを市場に出した後は、網修理だったり、沖に行って網を交換したりとか、漁をするための整備をしていきます。それを11時までやって仕事は終わりですね」
漁師は網の修理など、技術者としての一面も持ち合わせていて、網の修理ができなければ一人前とは認められないんだという。
漁師の魅力とは
「やっぱり魚を引き上げた時ですね。興奮しますよ」
漁師体験の頃から漁師の醍醐味は変わっていないようだ。
漁で獲れた魚を料理長が刺身や煮つけにして調理し、みんなで朝ごはんを食べることができるところも魅力の一つだという。
魅力的な仕事だが、大変なことはあるのだろうか。
自然と共存する仕事
「魚がとれない時が一番大変ですね。網を修正したり、設置方法を変えたり、戦略を練ることはできるんですが、最終的に自然相手なので対策しようがないんですよね」
台風の影響で1,000万円の損失が出ることもあるとのこと。それでも漁師を続ける理由を聞くと、魚が取れた時のやりがいや、今日がダメでも明日があるという中毒性が漁師にはあるという。
最後に体験希望者へのメッセージを聞いた。
漁師には感動とロマンが詰まっている
「魚を引き上げた時の感覚は体験してみないと分からない。感動とロマンが詰まってますよ。漁師を目指している人はぜひうちで体験してみてほしい」
インタビュアー後記
和田さんは普通科の高校から何一つ知識もないまま漁師の世界に飛び込み、魚の名前も仕事を始めてから覚えたそうです。好きな魚はウルメイワシ。捕れたてじゃないと刺身では美味しくないそうです。これを食べられるのも漁師の特権であり、漁師の仕事は体験しないと魅力が伝わりきらない世界です。ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか。