【今も続く伝統建築「漆喰」】漆喰の歴史や効果|ピラミッドにも使われた技法

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漆喰とは

城や蔵など古くから受け継がれてきた伝統的な建築物の壁が、白い建材で作られていることに気付いている方は少なくないでしょう。

伝統建築に用いられている白い壁は、ペンキなどで着色しているものではありません。 白く見える城や蔵などの壁に使われているのは漆喰(しっくい)と呼ばれる建材です。

かつて運動場にライン引きで白線を引くのにも用いられた、消石灰が原料となっているので一般的な漆喰の壁は白くなります。 日本各地に点在する歴史的建築物の壁は、土壁を漆喰で仕上げたものが多いのが特徴です。

漆喰は外装材としても内装材としても使われる非常に便利な建材で、古くから日本国内だけではなく世界中で使われている優秀な建材が漆喰です。

漆喰の歴史


出典:写真AC

漆喰が用いられた最古の建造物だと考えられているのが、今から約5,000年前に作られたと言われているピラミッドです。ピラミッド以外でも古代ギリシャやローマ時代の建築物に漆喰が用いられていることが確認できます。 シルクロードを経由し漆喰の加工技術は中国にもたらされます。

高松塚古墳やキトラ古墳などの飛鳥時代の建造物に漆喰が用いられていることから、日本には約1,300年前に漆喰の加工技術が渡ったと考えられています。 その後、城郭建築に漆喰が用いられ多くの城の壁が漆喰で飾られます。漆喰を多用したものとして白鷺城と呼ばれる、兵庫県の姫路城などが代表的なものです。

高級建材である漆喰は富の象徴として、江戸時代には豪商や豪農の蔵や神社仏閣にも用いられるようになり、日本国内で独自の漆喰の技術が育まれます。

現在日本国内には本漆喰、土佐漆喰、既調合漆喰、琉球漆喰の4つの漆喰と、安価な上に漆喰の機能を有する漆喰関連製品と呼ばれる計5種類の漆喰が存在します。

漆喰の材料・作り方

既に紹介したように漆喰は消石灰を主原料として作られます。消石灰は石灰岩に塩を加えながら1,000度以上に加熱して作られます。この消石灰に水を加え麻や藁などの補強剤、海藻を焼いて作られた糊と呼ばれる接合剤を加えて混ぜたものが漆喰と呼ばれます。

雨の多い地方では鯨油や魚油、菜種油を練りこむことで防水性を高める加工も存在します。 屋根に使用する漆喰や壁の仕上げの前の中塗りと呼ばれる漆喰には川砂などの骨材が加えられるほか、近年では補強剤に天然素材ではないナイロン繊維やガラス繊維などの化学繊維を用い作られます。

また、接合剤を補強する水溶性樹脂メチルセルロースやアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂など様々な樹脂を用いて作られる漆喰も存在します。本来は白であった漆喰も、近年では顔料を加えることでカラーバリエーションを付けることが盛んに行われています。

漆喰の壁のメリット・効果


出典:写真AC

かつて漆喰は優れた耐久性と防火性が認められ、城郭や蔵の建築に用いられました。近年の研究では、次に挙げるような漆喰の新たな能力が確認されています。

○消臭能力:京アルカリの消石灰で作られる漆喰には、匂いの原因となるカビや細菌の繁殖を抑制する能力があると言われています。

○化学物質の分解能力:漆喰の壁はハウスシックの原因であるホルムアルデヒドを吸着し分解すると考えられています。

○保温能力:漆喰は熱伝導率が低い、いわゆる断熱材としての働きを行います。外部の熱の影響を受けないことから冷暖房の効率を向上させると言われています。

○湿度調整能力:土壁は表面を仕上げる漆喰を通して、空気中の湿度が高ければ湿度を吸収し、低ければ湿度を排出する働きがあります。漆喰の仕上げをするだけでも室内の湿度調整をしてくれると言われています。

漆喰の壁のデメリット


出典:写真AC

世界中で古くから用いられている顕在の漆喰ですが、新しい建材に比べると見劣りしてしまう点などもあります。漆喰の壁には次に挙げるようなデメリットがあると言えます。

○ひび割れしやすい:化学合成された糊や接着剤を使用しない漆喰は、衝撃を受けるとひび割れてしまうことがあります。

○施工が難しい:漆喰加工は高い技術力が必要となります。これは工期がかかることや、工賃が高くなることに繋がります。

○施工後に匂う:漆喰は海藻を焼いたものを繋ぎとして作られるために、施工後しばらくは独特の臭いを発します。

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