発電所として有名な黒部ダムの水は、黒部川となり、北に向かって富山湾を目指して流れます。その途中で川は深い黒部峡谷を形成していますが、その急峻な峡谷を通る鉄道が黒部峡谷鉄道です。非常にユニークな鉄道路線で、これ自体が観光資源となっています。
エメラルド色に輝く水面を見ながらの旅はまた格別なものです。黒部峡谷鉄道は、冬季期間は運航していません。一般客が乗車できるのは、4月の連休前から11月までです。黒部峡谷鉄道は、富山地方鉄道本線の終点、宇奈月温泉駅に隣接の宇奈月駅が始点となっています。
大きな温泉街である宇奈月に泊り、朝のうちに鉄道に乗るというのもお勧めです。北陸新幹線の開通で、東京からも大変近くなりました。新幹線黒部宇奈月温泉駅で乗り換えますと、宇奈月温泉までは30分です。富山駅からですと、1時間45分程度です。宇奈月温泉には広い駐車場(350台収容)もありますので、車でもスムーズに入れます。
黒部峡谷鉄道の車両の特徴
出典:写真AC
黒部峡谷鉄道の線路も黒部ダムまで延びているのですが、これには一般客は乗れませんので、黒部ダムヘは行けません。ですが、鉄道の歴史と黒部ダム、黒部川の電源開発は非常に密接な関係があります。もともと黒部川の電源開発のために生まれた鉄道だからです。そのため現在も、黒部峡谷鉄道は関西電力の100%子会社です。
トンネルの大きさが小さいため列車の車幅も小さく、二本のレール幅が762㎜という、日本でもごく珍しい「特殊狭軌」と呼ばれる路線となっています。小さな電気機関車が二両重連で、側面の開放された客車を牽引します。眺めがよいですが、悪天候の際には雨が入ってくることもありますし、11月になれば相当に寒いので防寒対策も必要です。
夏でもトンネル内は大変ひんやりとしています。ですが大自然の中でそれらも一興です。客車はこの、開放タイプ以外にも窓付きのものが二種類、「リラックス客車」と「特別客車」があります。こちら二種類には、片道についてそれぞれ530円、370円の特別料金が加算されます。寒い時期でも暖房が入ります。
ただ、車両を問わずトイレはありませんし、道中のトイレ休憩もありません。トイレ時間も必要ですので、余裕を持って利用しましょう。
黒部峡谷鉄道の乗車券情報
黒部峡谷鉄道の一日の運行本数は、上下各11本となっています。予約なしでも乗れますが、混雑時には乗れないこともあります。特に朝一番の列車なら、チケットは予約してから行きましょう。オンラインでも予約できます。運賃は、全線開通時の宇奈月~欅平間で大人1,980円、子供990円です。
5月の連休前は終点欅平駅まで行けませんので、途中駅の「笹平」または「鐘釣」までで折り返す必要があり、黒部峡谷鉄道の公式Webサイトでは往復乗車券のみ案内されています。終点欅平駅まで行っても、その先道路がどこかに抜けているわけではありません。
名剣温泉、祖母谷温泉といった駅から山奥に入り込んだ先の秘湯に泊る人以外は、必ず宇奈月温泉まで戻る必要があります。名剣温泉は、「日本の秘湯を守る会」会員の名湯でもあって、日帰り入浴も可能です。「ばばだに」と読む祖母谷温泉もまた日帰り入浴を受け付けています。
黒部峡谷鉄道の写真スポット①
出典:写真AC
黒部峡谷鉄道は特殊な鉄道路線ですから、鉄道ファン、撮り鉄にも人気があります。もちろん、ゆったり走る観光路線ですのでトロッコ列車に乗っての撮影も楽しいものです。始点の宇奈月駅から終点欅平駅付近まで、鉄道のビューポイント、またそれ以外にもまんべんなく撮影スポットがあります。
まずは宇奈月駅近くの、赤い鉄道鉄橋「新山彦橋」線路を見下ろす「やまびこ展望台」です。線路がトンネルを抜け、鉄橋で黒部川を渡ってくる姿を上から撮影することができます。紅葉(11月中旬が見ごろ)の時期には、赤い鉄橋が映えてそれは綺麗です。車内アナウンスは、富山出身の女優・室井滋さんが担当しています。
黒部峡谷鉄道の写真スポット②
次に、「猿専用橋」です。ダム湖であるうなづき湖の上に、野生の猿の移動のために設けられた吊り橋が架かっています。車窓から、運が良ければ猿の移動が撮影できるでしょう。車内でもアナウンスしてくれますので、知らずに通過してしまうことはありません。
続いて、三番目の駅「黒薙」駅で降りますと、沿線で60mと最も高く、険しい谷に架かる「後曳橋」を渡る列車の姿が見事です。列車の出ていったあとのホームから、青い橋を渡る姿が写せます。さらに駅から歩いて昇っていきますと、列車を見下ろしたビューの撮影もできます。ここ黒薙は温泉が豊富で、宇奈月温泉の源泉でもあります。
黒部峡谷鉄道の写真スポット③
出典:写真AC
鐘釣駅からは、歩いて3分の場所に「黒部万年雪」が対岸に見える「万年雪展望台」があります。ベンチも用意されています。後述の「河原露天風呂」があるのもこの駅です。終点欅平駅の周辺は、少し歩くと非常に綺麗な峡谷の姿を目の当たりにできます。
30分歩きますと、「猿飛峡」という、川幅の狭い箇所があり、特別名勝・特別天然記念物に指定されています。こちらには展望台も。同じく欅平駅付近には足湯の「河原展望台」もあります。ここからは後述の「奥鐘橋」を見上げられますが、これも撮影スポットです。その他、歩道に覆いかぶさる「人喰岩」など、至るところに撮影スポットがあります。