「一縷(いちる)」の意味と使い方|類語・対義語・由来もチェック!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【意味】 「ごくわずかな」「細い」
【由来】 「縷」の細かい糸と「一」の僅かなという意味が合わさったことから。
【類語】 「ひと筋」「ごく僅かな」「ひと筋の希望」「ひと筋の生命」「ひと筋の光」
【対義語】 「確実」「本命」「濃厚」「上手の手から水が漏る」「猿も木から落ちる」


出典:写真AC

「悲願のワールドカップ出場のため、日本代表はこの予選に一縷の望みを賭けた」

「クライマックスシリーズセカンドステージの初戦を落としたが、日本シリーズ出場のため一縷の望みを先発右腕に託した」

このような用例、特にトーナメント戦など負けられないスポーツにおいて、しばしば「一縷(いちる)」という言葉が使われます。では、この「一縷」とはどういう意味かご存知でしょうか。

「一縷の望み」というのはなんとなく意味は伝わりますので、かえってその先、「一縷」について深く考えることは少ないかもしれません。

一縷の意味

「一縷」は、「ごくわずかな」「細い」という意味です。「一縷の望み」といいますと、「ほぼ絶望的ではあるが、ごくわずかな希望がある」という意味になります。通常使っている感覚とは、特にずれていないでしょう。

一縷の由来・言葉の背景


出典:写真AC

もともと「一縷」とは何でしょうか。これは、糸のように細いものを指す言葉です。糸へんの漢字である「縷」は、細い糸のことです。この字もあまり使いませんが、「縷々」「縷言」「縷説」などの熟語があります

いずれの熟語にも意味が共通しているのは、「細かい」ということです。数字の一にも、僅かなという意味があります。二つの意味を合わせ、ごく僅かな、というのが一縷の意味です。

イメージとしては、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」です。主人公カンダタも、わずかな可能性だと思って糸を昇れば、地獄にまた落とされることはなかったのではないでしょうか。

一縷の使い方

「一縷」とくれば、だいたいその次は「望み」となります。ですが、これ以外の言葉とも繋がります。「ごく僅かな・細い」という意味で一縷を使うのであれば、決して不自然な用法ではありません。

例として、「一縷の生命」「一縷の光」「一縷の煙」などの用法もあります。光や煙であれば、単に物理的に細いという意味に過ぎませんが、希望や命に対して使うと、「細い」から転じて「ごく僅かな・消えかけた」という意味となります。

一縷の類語・対義語

一縷の類語といいますと、「ひと筋」が、ほぼイコールでしょう。これも、細さを意味する言葉であり、そこから転じて「ごく僅かな」という意味にも使えます。「ひと筋の希望」「ひと筋の生命」「ひと筋の光」なども、ほぼ「一縷」に代わって使えます。一縷と同様に、文学的なニュアンスも漂っています。

一方、一縷の対義語としては何があるでしょうか。「確実」「本命」「濃厚」など、ストレートに意味が伝わるものばかりです。

「一縷の望み」と対になる、ほぼ確実な状態を指すならば、その際の慢心を戒める格言がいくつかあります。「上手の手から水が漏る」「猿も木から落ちる」などです。

一縷と似ていますが用法が違い、場合によっては対義となる言葉に「一抹」があります。通常は「一抹の不安」としてセットで使います。一抹は、刷毛のひと塗りの意味から来ています。

一縷も一抹も、ほんの僅かという意味ですが、使えるシーンはかなり異なります。「一縷の不安」とはいいませんし、「一抹の希望」ともいいません。可能性の薄さの中でなおポジティブなのが一縷で、可能性が高い中でなおネガティブなのが一抹といえるかもしれません。

物理的な意味に限定して使うなら「一縷の煙」「一抹の煙」と両方有り得ます。ただ、細いのが一縷で、欠片のようなものが一抹という違いがあります。

一縷から学ぶ


出典:写真AC

今までは「一縷の望み」というフレーズを、何の気なく耳にし、ご自分でも使うことが多かったのではないでしょうか。これからはこのフレーズを聞いて、細い糸のような僅かな可能性という、さらに具体的なイメージが見えてくるとよいですね。

日本人なら知っておきたい国語の知識

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連するキーワードから探す