手作業で作られる津軽の伝統野菜・大鰐温泉もやし

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青森県津軽地方で江戸時代から作られている伝統野菜「大鰐温泉もやし」。温泉の湯が豊富に湧き出るこの地方ならではの野菜です。

その独特の歯ごたえや趣あふれる風味が人気なのですが、すべて職人の手作業で作られているため、なかなか市場には出回らないという「大鰐温泉もやし」。今回は普通のもやしと比較しながらご紹介します。

もやしの歴史

もやしの歴史は古く、江戸時代の書物「和漢三才図会」には、黒豆をもやしにして、五寸ほどの長さに成長したもやしを乾燥させて煎じ、薬として服用したという記述があります。しびれや膝の痛み、筋肉のひきつりを和らげるのに使われたそうです。

その後、1850年には長崎に来た異人によってもやしの作り方が教えられ、やがて地方に広まりました。その後もやし作りの職人が長崎から江戸に上京、将軍に天下の珍味として献上したという話があります。

明治40年にはもやしを栽培する業者が出てきて、関東大震災以降にもやしが商品として売買されるようになりました。やがて第二次世界大戦後、全国にもやしの栽培業者が現れ、小規模な生産工場が一時は約1,000社もあったといいます。

やがて昭和40年には空前の味噌ラーメンブームが巻き起こり、もやしの認知度が一層高まりました。そして、ちょうどこの頃スーパーマーケットが誕生したため、もやしは量り売りする時代からパック詰めにして販売される時代になったのです。

大量消費されるようになったもやしは、いまでは工場で水耕栽培されています。光を遮断し、クリーンな環境で温度や水、空気を調整して作られるのですが、なかにはコンピュータで環境管理をしてもやし栽培をしている工場もあります。

大鰐温泉もやしの歴史

青森県の津軽地方の南端にある大鰐町。四季折々の豊かな自然に囲まれたその地は、津軽の奥座敷として名を馳せています。

そんな大鰐町で作られる伝統野菜が「大鰐温泉もやし」です。実は、大鰐町は昔から温泉の町としても広く知られていて、その地の利を利用した野菜栽培が盛んに行われていたのです。

かつて津軽藩を創設した戦国時代の武将、大浦為信の子孫である信義はたいそう湯治が好きで、それが高じて大鰐に御仮屋(おかりや)を建てました。

そして、参勤交代で津軽を訪れた時は、滞在中その半分を大鰐の温泉で過ごしたといいます。それ以降、大鰐の温泉に訪れる人が増え、町はたいそう賑わったのです。

また、それをきっかけに温泉を利用した野菜栽培が盛んになったと言われています。温かい地熱を利用して作られる野菜は、極寒の地方でも年中新鮮な野菜が食べられると喜ばれ、特に大鰐温泉もやしは信義が湯治に訪れた時に必ず献上されたことでも知られる野菜です。

大鰐温泉もやしのいまでも変わらぬ栽培法は、世代を超えて門外不出、一子相伝の技として次世代に受け継がれ、津軽地方の伝統野菜として大鰐温泉もやしは作られているのです。

大鰐温泉もやしは温泉の地熱を利用して作られる

津軽地方には阿房宮(食用菊)や長芋、町田せりなど歴史ある伝統野菜がありますが、なかでもひときわ注目を集めているのが、大鰐町で作られている「大鰐温泉もやし」です。

350年以上も前からこの地方でのみ栽培され、水耕栽培ではなく土壌栽培されています。極寒の地方ではあるものの、温泉が潤沢に湧き出る地中はその熱を利用して温めることができるのです。

土中には縱橫に配管が巡らされ、その中を温泉水が通っているので常に温かい状態。熟練の職人の手で大鰐温泉もやしの栽培に適した温度30℃が維持されるそうです。

大鰐で温泉の地熱を利用して作られているもやしは2種類あります。ひとつは「小八豆(こばちめ)」という門外不出の大豆のもやし。小八豆は地域在来の豆なのですが、他の品種の豆では同じ環境で育てても美味しいもやしができないといいます。

もうひとつは、そばの品種のひとつである豆を使って作られる「大鰐そばもやし」。こちらも豆は門外不出、栽培方法も秘伝という貴重なもやしです。

大鰐温泉もやし(小八豆)の栽培方法

普通のもやしの豆は緑豆やブラックマッペ、もしくは大豆であり、海外から輸入される豆がほとんどです。しかし大鰐温泉もやしの場合、豆からしてこの地方独特の豆「小八豆」を使って栽培され、他の豆は使いません。

黒土という栽培に適した土を深さ40〜50cmまで掘り、 長さ5mの「サワ」と呼ばれる土床を作ります。そこに2~3時間かけて5升もの豆が蒔かれます。

約1週間で収穫するのですが、大鰐温泉もやしの品質の良し悪しは種まきをしてから4日後の成長で決まるそうです。大鰐温泉もやしの栽培はそこにいたるまでの温度管理(30度を維持すること)が非常に難しく、そこに熟練した職人ならではの技が活かされています。

サワに大量の藁をかけて栽培される大鰐温泉もやしは、豆の洗浄から出荷にいたるまで水道水を一切使用せず、すべて温泉の水を利用して作られます。

出来上がったもやしは、普通のもやしよりも少し細く、長さは30~40cm。シャキシャキとした歯ごたえが特徴です。ビニールのパックではなく藁で束ねられて出荷され、地域の交流センターなどで販売されています。ラーメンの具材にしたり、豚肉とシンプルに炒めたり、もやしの旨みを生かした料理にして食べるのがおすすめです。

大鰐温泉もやしを地元の食堂で

大鰐温泉に行くことがあったらぜひ食べてみたい大鰐温泉もやし。旬は、11月~4月なので、この時期に行けば販売店で購入できるほか、地域の食堂でも料理してくれます。ぜひ大鰐温泉に足を運んだ際には、大鰐温泉もやしを味わってみてください。

アイキャッチ画像の出典:大鰐町ホームページ

 

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