「今日のお客様は大変に礼儀に厳しい方なので、おもてなしをするときには一挙手一投足に至るまで、細心の注意を払わなければならない」などという時に使われる、「一挙手一投足」という言葉の意味をご存知でしょうか。
「一挙一動」という言葉はよく使われますが、「一挙手一投足」はそれほど高い頻度で耳にする言葉ではありませんので、意味を取り違えている人も少なからず存在します。そこで、こちらでは、一挙手一投足という言葉の意味や由来、使い方などについてご紹介していきます。
一挙手一投足の意味
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一挙手一投足という言葉の意味は大きく分けて二つあります。一つ目は、一度だけ手をあげる、足を動かすなどの非常にわずかな動作の一つ一つを表すときに用いる場合です。二つ目は、このようなわずかな動きに費やす努力、つまりほんの少しの努力という意味で用いる場合です。
元々は、二つ目の意味であるわずかな努力という意味で用いられていましたが、近年では、どちらかといえばわずかな動作という意味で用いることが増えています。
一挙手一投足の由来
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一挙手一投足という言葉の由来は、中国の唐の時代に韓愈という詩人が著した『応科目時与人書』という書物にちなんだものです。当時、25歳の韓愈は官吏の登用試験である科挙の進士科を受け、難易度の高い試験であるにもかかわらず合格しました。
彼は非常に努力家で、貧しい出自ながらも苦学の末に勝ち取った合格でしたが、最終的に合格するためには推薦者も必要だったのです。しかし、名門の出ではなかった彼を推薦する人物はおらず、韓愈は試験官に推薦を依頼する手紙を書きました。
その手紙では、自分のことを水があれば大きな力を得られる怪物になぞらえており、「もしもあなた(試験官)が私を水辺まで運んでくださるとしても、それは一挙手一投足の労にすぎません」と記したのでした。ほんの少しの努力を得られなければ、自分はこのまま力を失ってしまうと嘆願した韓愈のこの言葉が、一挙手一投足の由来です。
一挙手一投足の例文
一挙一投足という言葉は、ほんのわずかな動き、少しだけの努力というときに使うことができます。ただし、動きに焦点を置いた場合には、体全身の動きというよりは、手足の動き、自分の意思で動かす動きという意味合いで使うことが多いです。
「彼女の舞は非常に優美で、一挙手一投足に至るまで、一幅の絵を眺めているようだった」というように使うとよいでしょう。また、わずかな努力という意味合いで使うときには、「あの人は本当に自分のことしか大切にしない人間で、他人のためなら一挙手一投足の労さえ惜しんでいる」などのように用います。