こぎん刺しは三大刺し子の一つで、江戸時代から青森県津軽地方に伝わる刺し子のことで、刺し子と布に糸を縫い重ねていく刺繍したものです。刺繍は、主に装飾のために行ないますが、刺し子は布の補強のために行なったのが始まりです。
刺し子の中でもこぎん刺しや、同じ青森県の南部刺しは補強のためだけでなく、縫い重ねることで布の織り目の穴をふさいで風を通しにくくするという、防寒のための工夫がこらされています。
こぎん刺しの特徴は、縦糸を奇数で数えて刺すことです。菱形正方形を布一杯にびっしりと縫い重ねます。どのモドコ(基礎となる菱形模様)を使うか、どう配置するかで美しいこぎん刺しの布が出来上がります。もう一つのこぎん刺し特徴は、藍色の布に白い糸で刺すことでしたが、今では様々な色の布や糸が使われています。
こぎん刺しの伝統的な図案
出典:写真AC
こぎん刺しの基本は菱形模様です。しかし、一口に菱形といっても基礎となる模様・モドコは約40種類あります。また、モドコの名前は日常使う言葉からついたものも多く、こぎん刺しが津軽の人々の生活と深い関わりがあることがわかります。代表的なモドコをご紹介します。
・石畳:三角を四つ組み合わせ、真ん中を四角く空けた菱形
・花コ:中に点が一つ入った菱形
・うろこ:三角を何個も組み合わせて出来た菱形
・猫のまなぐ:猫の目(まなぐ)のように横1本の線が入った菱形
こぎん刺しはこれらのモドコを組み合わせ、大きな模様を作っていきます。
こぎん刺しを作るのに必要な道具
こぎん刺しに難しい道具は必要ありません。基本的には布と糸と針、図案を描くための方眼紙があれば十分です。布は、昔は麻布と木綿糸を使っていましたが、どんな布や糸を使ってもかまいません。
一般的にはコングレスやリネン刺繍布など、刺繍用の布を使うと布目がわかりやすいのでお勧めです。布目がわかりにくい布を使いたい場合は、抜きキャンバスも必要です。抜きキャンバスは網目状の布で、使いたい布の上に重ねて縫い、作業が終わったら糸を引き抜きます。
糸はこぎん刺し専用のこぎん糸がありますが、刺繍糸や毛糸も使うこともできます。針も自分の使いやすいものを選ぶといいですが、刺し子用の針なら長さもあり、先が丸くなって布が傷みにくいのでおすすめです。
こぎん刺しの作り方
出典:写真AC
まず、図案を決めます。図案集を購入するか、ネットで検索するかして、作りたい図案を考えます。初めての方はこぎん刺しキットを使うのもよいでしょう。
自分で考える場合は、方眼用紙に図案を描きます。こぎん刺しのモドコは基本的に正方形ですが、使う布によって縦長になることもあります。布の織りを確認しておかないと、イメージ通りに仕上がらないこともあります。抜きキャンバスを使用する場合は、布の上に仕付け糸で縫いつけておきます。
次に、図案にそって模様を刺していきます。右から左へ、横糸一段ずつ刺していきます。こぎん刺し用の糸は6本撚りの糸です。刺している最中に撚りが緩んでくるので、ときどき撚りを戻しながら刺しましょう。
途中で糸が足りなくなったり、刺し終わったりしたら、裏側で何回かくぐらせて始末します。抜きキャンバスを使用している場合は、仕付け糸を取り、抜きキャンバスを1本ずつゆっくり抜きます。