「しっぽり」について理解を深めていただくため、「しっぽり」を使った例文を3つここで上げてみます。
・小雨の中を傘もささずに歩き回るものだから服はしっぽりと濡れてしまった
・2人は今日はカウンターの席にに座り横に並んで酒を酌み交わし、今日はしっぽり酒を飲んでいる
・少し薄暗い部屋の中、しっぽりと物思いに耽る
しっぽりの意味
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しっぽりは、状態の表現で使用されます。古い日本の言葉であり、英語や中国語、韓国語で同じ意味や表現をできる単語はありません。辞書やインターネットでも、良い意訳は出てきません。なぜなら「しっぽり」は、他国にない日本で生み出された日本独特の言葉であり、表現であるからです。
しっぽりが表している意味は、「人」あるいは「物」が少しずつ影響を受けていく様で、それを指してしっぽりと言います。少しずつ服に水がしみていく様子や、2人が酒をお互いに酌み交わしながら、心が通い合い、親交を深めている様子にも使えます。また、物思いにふけたり、頭の中が考え事で満たされる様子を指す場合もあります。
2人でいる時以外にも1人でいる時にも使うことができる言葉です。ほかには、ものが影響を受けて、変化していく様子の状態にも使えます。
しかし、「しっぽり」はゆっくりと影響を受け、変化していく状態を表現しますので、使うことのできる動詞は限られます。また、「しっぽり」は絵画的な風景を表すために使われています。
しっぽりの由来
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「しっぽり」の由来は、染み染みであったり、しっとりの語尾が変化したという幾つかの説の理由がありますが、詳しくはわかっていません。
なぜなら、「しっぽり」は正式な文書に使われる「文語」ではなく、人々が普段の雑談で使う「口語」あるいは「俗語」であるためです。「しっぽり」は、どこから来たかわからないのです。
どんな場面で使えるのか
「しっぽり」を使える場面は、限られています。「物」や「人」からゆっくりと影響を受けている「物」「人」を表現しているので、激しい変化や環境や動詞には使えません。人が滝に打たれて濡れている様子を、「しっぽり」とは言いません。
また、車でドライブをしながら外を見て、風景を「しっぽり」と言いません。
「物」や「人」が他の「物」「人」から影響を受けて、少しずつ変化する状態の時が正しい使うタイミングです。「しっぽり」の例文を紹介します。
・秋の北陸の海岸線で、夕日を眺めて2人の恋人は日が水平線へ沈む少し前のその時、しっぽりと肩を寄せ合う
・春の朝の雨がしっぽりと、桜の花を濡らして散らしていく
・長年連れ添う夫婦は無言の時間を会話を交わさなくてもしっぽりと過ごすことができる
しっぽりの類語・対義語
「しっぽり」の類義語
・しとしと
・しょぼしょぼ
・じとじと
・しんしん
・びちゃびちゃ
「しっぽり」の対義語
・さっと
・すぐに
・あっという間に
・早くも
・急に
しっぽりの意味から学べること
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「しっぽり」は、使うことが難しく、日本人の「わびさび」という考え方からくる言葉で、外国人に伝えようにも「Slowly(ゆっくり・遅く)」とも少し違い、伝えにくい言葉です。
それは「しっぽり」が「やまとことば」であり、日本古来の古くからの日本の精神性の中から出てきた言葉だからです。
日本語には人間関係に関する単語が多く、関係性を表すために、たくさんの言葉が作られてきました。「しっぽり」も、日本独特の単語である、「やまとことば」であり、日本人同士の人間関係のあり方を表している言葉です。
日本人は、以心伝心が成り立ちます。なぜなら、島国であり、国民の同質性が高く、似たような思考回路をしているからです。そして、「しっぽり」はお互いに心が通じる様子を表すことに、使うことのできる素敵な言葉です。