五重塔とは
五重塔とは五層構造になっている仏塔のことで、五重の屋根を持っているのが特徴です。日本各地の寺や神社の境内にあり、京都にある東寺の五重塔や奈良にある法隆寺の五重塔などが有名です。
十一塔が国宝に、十四塔が重要文化財に指定されていることから分かるように、歴史的に貴重なものが多いです。五重塔は、実用的な建造物ではなく信仰の対象として建てられました。五重塔には手すりや窓が付いていますが、実際に使用する目的ではなく、飾りとして作られています。
五重塔の最上部にある屋根の上には金属製の相輪が取り付けられています。
五重塔が作られた理由・意味
出典:ぱくたそ
仏塔は古代インドで仏教の開祖である釈迦の遺骨、仏舎利を奉安するために建造されたストゥーパが起源になっています。ストゥーパとは古代インドの丸く土を盛上げた墳墓のことをいいます。
ストゥーパは饅頭のような半球形でしたが、仏教と共に中国に伝来すると中国にもともとあった楼閣建築が取り入れられて、五重塔のように高層化して朝鮮を経て日本に伝わりました。
五重塔以外にも三重塔や七重塔などもあります。ストゥーパは卒塔婆の語源で、五重塔の相輪はストゥーパの名残であるとされています。宇宙は地・水・火・風・空の五つの要素で構成されているという仏教の宇宙観、五大思想を表現しているのが五重塔であるために五重の構造になっています。
一層目の基礎が地、二層目の塔身が水、三層目の笠が火、四層目の請花が風、五層目の宝珠が空を表しています。相輪は下から露盤,伏鉢,受花,九輪,水煙,竜車,宝珠で構成されています。
五重塔の構造
出典:写真AC
五重塔は外から見ると五階建ての建造物のように見えますが、内部は吹き抜け構造になっているので、上部の階層に上がることはできません。
五重塔の構造は、独立した五つの層が積み重なったものになっていて、その中央を心柱が貫いています。心柱は五層目の頂部とだけ接していて、一層目から四層目までとの間には隙間があります。
それぞれの層は軒、組物、軸部で構成されています。五重塔の構造は水平方向の振動に強いとされていて、その耐震性の高さが注目されています。歴史上、五重塔が地震で倒壊したという記録はこれまでのところありません。
奈良の五重塔
奈良には多くの五重塔があり、特に法隆寺や興福寺の五重塔は国宝に指定されていて有名です。法隆寺の五重塔は605〜607年に創建され、火災で焼失した後680年頃に再建されました。
五重塔を中心とする法隆寺の西院伽藍は現存する世界最古の木造建築として知られています。積み上げ構造という建築方式が使われていて、東京スカイツリーなど現代の高層建築にも取り入れられています。
興福寺の五重塔は730年に光明皇后によって創建されましたが、5回の火災と再建を繰り返し、現存している五重塔は1426年頃に再建されたものです。高さが50.1メートルと、日本にある木造塔の中では東寺の五重塔に次ぐ2番目の高さを誇っています。
50メートルというと現代のビルに例えると13階建てに相当するのでかなりの高さです。他にも奈良では室生寺、元興寺、海龍王寺の五重塔が国宝に指定されています。
五重塔の魅力
出典:ぱくたそ
五重塔は法隆寺や興福寺など国宝に指定されている歴史あるものから、近代・現代になって建造されたものまで、日本各地に点在しています。
寺院だけでなく、日光東照宮や厳島神社などの神社にもあります。五重塔の魅力はまず、そのシルエットです。存在感があって目を引くと共にその美しさが心に残ります。
五重塔は長年そこに建ち続けてきて、昔の人も見ていたと考えると歴史のロマンを感じさせます。もちろん信仰の対象としての存在意義もあるので、見ていると厳かな気持ちになります。
昔の建造物でありながら、現代にも通じる耐震性や高さなど先人たちの知恵も感じられます。五重塔には日本人である私たちの気持ちを掴んで離さない不思議な魅力があります。