【磁器との違いって?】陶器の歴史と魅力を解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

食器、茶器、鉢など日常の様々な場面で登場する「陶器」。その歴史はいつから始まったのでしょうか。陶器の歴史、作陶の手順、磁器との違いなどを解説します。

陶器の歴史


https://www.photo-ac.com/

私たちの生活に数多く利用されているのが陶器です。 一口に陶器と言っても陶器は磁器、セラミックスなどを包括する焼き物の総称として扱われ、技術も世界中に分布しています。日本国内では今から16,500年前の縄文時代に作られたと考えられている縄文武土器から、陶器作りが行われています。

原始的な素焼きの陶器であった縄文式土器から、より肉薄で均整の取れた土器である弥生式土器に進化し、手の込んだ兵士の土偶や樽型の磁器が飛鳥時代に造り始められるまで技術が進歩しました。この時代には窯の精度が上がったことから窯内の温度が上昇し、陶器の強度が向上すると共に焼成中に灰がかかり、熔けて自然釉のかかったものも登場しています。

奈良時代になると人為的に釉をかけた作品が登場します。 現代の陶器の文化のベーシックな部分はこの時代に構築されたと言えるでしょう。 鎌倉、室町の時代には中国の製造法に影響を受けた陶器の製作が盛んになり、陶器は日本の文化として完全に定着し、安土桃山時代には戦国武将がこぞって茶器を求め、陶器がステイタスシンボルとして扱われるようになります。

江戸時代に入ると現代にも多く残る陶器の名産地が、地場産業としての陶器作りを開始し庶民の生活にも多くの陶器製品が普及するようになりました。 文明開化と言われた明治以降の陶器は、西洋の磁器の影響を強く受けた作風のものが好まれるようになります。 しかし一方では古来からの伝統的な製法を守り続ける工房も数多く存在し、現代の私たちの生活に選択の幅と潤いを与えてくれています。

陶器の特徴


https://www.photo-ac.com/

焼き物の総称として使われることが多い陶器ですが、日本では次のような住み分けがされています。

【陶器】

萩焼のように素焼きの風合いを生かした作品が多く、吸水性があり、作品をノックすると濁った低い音がします。 この特徴は、陶器の作品を構成する粘土の密度が低く硬度が低いことを意味します。 素朴な風景と手にした時に温かみを感じさせられるのも粘土の密度が低いことが要因になっていると言えるでしょう。 和食器の製作に使われることが多い種です。

【磁器】

白地の硬質な素材に緻密な絵付けが行われているものが多いです。 吸水性に乏しく、作品をノックすると硬質な高い音がします。 洋食器の多くが磁器で作られますが、焼き物の町として有名な有田や九谷はこの製法で造られています。

陶器の材料

陶器の材料は粘土ですが、一口に粘土と言っても様々な種類が存在します。 ガラス成分を多く含む土壌から取れた粘土は、素焼きでも焼き窯が一定の温度に上昇すると含まれているガラス質が溶け出して、釉薬を使用しなくても不思議な景色を造り出してくれます。

しかし、陶芸作家にこの風景のデザインをコントロールすることができないので、窯だしするまでは、作品の仕上がりがある程度までしか予想できません。 これは製品の品質を統一しづらいというデメリットがある反面、唯一無二の作品が出来上がるというメリットも生み出します。

陶器の生産地によって土壌の性質が異なることから、陶器の生産地独特の作風が創りあげられたと言えるでしょう。

陶器を作る手順


https://www.photo-ac.com/

陶器の作品を作る「作陶」の流れは次のとおりです。

・土選び:作品に適した粘土の選定を行います。

・土練(どれん)作業:作品に使用する粘土を練り上げます。近年は土練機という機械もあり手作業の負担を軽減しています。練りながら粘土に含まれる空気を抜くことがポイントです。

・成型作業:作品作りの場面です。制作方法はロクロが有名ですが、これ以外にも手捻り、 紐作り、タタラ作り、型作りなどの種類があります。

・高台(こうだい)処理:陶器の代表的な作り方であるロクロ作りでは、作品の底部を糸を巻きつけてロクロ台上の粘土から切り取ります。この高台があると作品の座りが良くなるメリットが発生します。粘土が乾く前に高台を削って処理します。

・自然乾燥:粘土の作品を自然乾燥させます。しっかり乾かない状態で窯入れするとひび割れするのでジックリと確実に乾燥させます。

・素焼き:自然乾燥してもこの状態で濡れると粘土に戻ってしまうので、窯入れして素焼きを行います。素焼きすればたとえ濡れてしまっても粘土には戻りません。この状態で商品化されるものは植木鉢などの素焼きで構わない作品です。

・釉薬掛け:上薬とも呼ばれる釉薬をかけることで、素朴な素焼きから雅な器に生まれ変わります。熱による化学変化で変色するために、こちらも陶器作家が完全にコントロールすることができません。緊張の一瞬です。

・本焼き:陶器作品を生み出す作陶の仕上げの工程です。1,230~1,250にも及ぶ高温で陶器作品に焼き入れを行います。この作業で釉薬が化学反応を起こし変色し、素焼きの状態では水が浸透して水漏れしてしまう陶器を器として完成させてくれます。

陶器の魅力

量産されずに手作りで創りあげられた陶器は、どこか温もりを感じさせてくれるものです。 西洋食器に使用される硬質な磁器は、お洒落な雰囲気を漂わせますが、温かみのある和食器は癒しの効果もあると感じます。 茶道で使用される茶器と呼ばれる湯飲み以外は、雑器(ざっき)と呼ばれています。 気分に合わせて使い分ければ、違いが如実に感じられるのではないでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加