萬古焼とは、三重県の四日市市で生産されている陶器のことです。
萬古焼の「萬古」という名前の由来は、不変性を保ち万古不易(ばんこふえき)であるようにとの願いから、陶器に萬古あるいは萬古不易の印を押したことからきているとされています。
そんな萬古焼きで有名な陶器には、土鍋や急須があります。まず土鍋は国内シェアの8割を占め、ご飯鍋・陶板・蒸し鍋・タジン鍋・多機能鍋・煮込み鍋などバラエティーに富んでいるのが特徴です。
次に急須、萬古に使われている紫泥はお茶の渋みを出すカテキン成分を適度に吸収することで、旨味を引き出し、まさに緑茶を飲む名器と言えます。
また使っていくうちにツヤや光沢が出てくるので、見た目も味わうことが出来るのも魅力の陶器です。
萬古焼の歴史
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萬古焼が生まれたのは、およそ270年前に桑名の商人沼波弄山が京焼の陶工として知られる尾形乾山に釉薬(耐水性を強化し、また色付けとしての役割も担っていた)の製法を教わり、桑名の藩領であった三重郡朝日町小向に窯を製作したのがきっかけです。
次第に萬古焼は人気を集めるようになり、時の将軍・徳川家治も窯の見学に来たとされています。
しかし、その名声も長くは続かず後継者がいなかったことから一時衰退してしまうのでした。しあkし、そんな萬古焼を救うべく森与五左衛門(森有節)が立ち上がり再興を果たします。
彼の活躍によりパリ万国博覧会など国内外の博覧会を通じて、萬古焼は世界へその名を知らしめるのでした。ちなみに弄山の陶器が古萬古と呼ばれる一方、五左衛門の陶器は有節萬古と呼ばれています。
それから有節の作った陶器に惹かれた四日市で村役をしていた山中忠左衛門によって萬古焼の量産法が編み出され、今日まで四日市の地域産業として根付いてきました。
萬古焼の特徴
萬古焼の特徴を、一例として急須について説明していきましょう。
萬古焼の1つ目の特徴は伝統工芸品として指定されていることです。2つ目の特徴としては、成形方法が水ゴテ・排泥鋳込み・圧力鋳込み・型萬古と様々で、中でも型萬古(木型に和紙や布を巻いて型を取る方法)は森有節によって編み出されてから100年以上引き継がれています。
3つ目の特徴は焼成方法です。実は萬古焼の急須は土に応じて焼く方法を変えています。例えば紫泥も朱泥もどちらも鉄分をよく含んだ土ですが、紫泥が還元焼成で焼かれ、酸素が尽き濃い紫がかった青色になるのに対し、朱泥は酸化焼成で焼かれ酸素がくっつくことで赤色になります。
また朱泥の急須は使っていくうちに虹色が表れるのも特徴です。
「土鍋なら萬古焼」の理由
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萬古焼の土鍋の良さは3つあります。
1つ目は、耐熱性に優れている点です。従来の土鍋は急激な温度変化に弱く、ヒビ割れが生じやすいのに対し、萬古焼の土鍋は熱に強いペタライトを入れることによって、耐熱性に優れヒビ割れが生じにくくなっているのです。
2つ目に遠赤外線効果があります。土鍋などの萬古焼の陶器に熱を加えると遠赤外線が発生します。遠赤外線は食べ物を能率的に温めてくれるため、お米の芯が柔らかく艶やかとした美味しいご飯を炊くことも可能です。
3つ目に種類の豊富さがあります。前述したように土鍋には様々な種類があり、それぞれ調理法や料理に応じて使い分けることが出来るのです。例えばリゾットやパスタなら陶板鍋で、牡蠣のどて焼きならタジン鍋とそれぞれにあった萬古焼の鍋で調理することでさらに美味しく味わうことが出来ます。
萬古焼の土鍋を長く使うためには?
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萬古焼の土鍋を長く使うためのお手入れの方法は3つあります。
1つ目のお手入れ方法は、目止めです。目止めは土鍋に使われている粘土が粗く、吸水性に優れているため汚れや匂いが取れにくく、またヒビ割れを起こすのを米のとぎ汁や片栗粉などを煮ることで粘土の表面の隙間を埋める方法です。
そして目止めをする際には注意点として、萬古焼の土鍋は耐熱性に優れてはいますが、必ずしもヒビ割れを起こさないというわけではないので火加減に気をつけましょう。
2つ目のお手入れ方法は、洗い方です。土鍋を洗うのは水が好ましいですが、洗剤で洗っても大丈夫です。しかし洗剤で洗う際には念入りに洗い流すことが必要になります。
お手入れ方法の3つ目は、匂いの取り方です。もし土鍋の匂いが気になる場合は、一度洗った後にお湯とレモン汁、あるいはお酢などを土鍋に入れて8時間ほど置いたら水で洗い乾かします。そうすることによって、萬古焼の土鍋についた嫌な匂いを消すことができるのです。
萬古焼の祭典・四日市萬古まつり
四日市萬古まつりは、萬古焼をより多くの人々に知ってもらうのを目的に、毎年5月の第2土曜日と日曜日の2日間に萬古神社周辺や、ばんこの里会館で開催されているお祭りです。
このお祭りの魅力は萬古焼の体験などが充実し、大人だけでなく子供も楽しめ、また萬古焼を安く手に入れることが出来る点です。
萬古焼職人を育成する塾
「やきものたまご創生塾」とは、萬古陶磁器工業協同組合で萬古焼の伝統を継承する職人を育成するために行なわれている研修です。
万古不易を体現する萬古焼の姿
萬古焼は江戸時代沼波弄山によって作り出されて以来、一度は衰退したものの進化し変化を遂げてきました。いまは成形方法の主流はろくろですが、昔ながらの成形方法型萬古も廃れることなく引き継がれています。
これは萬古焼が目指した姿、万古不易が反映されていて、その精神こそが長く愛され続ける秘訣なのでしょう。