美しい漆喰塗の壁を持つ日本家屋。その壁を塗る仕事をしているのが「左官屋」と呼ばれる職人です。日本の左官技術は海外からも注目されるほど高く、その秘密は長く続く左官屋の歴史の中で生み出されてきた道具や技術にあります。
今回は、左官屋という職人の仕事について紹介します。
左官屋とは
出典:写真AC
左官屋とは、代々受け継がれてきた伝統技術を用いて建築に携わる職人を指す言葉です。例えば建築に携わる職種のひとつに大工がありますが、左官屋と大工の仕事内容は全く異なっています。大工は組み立て作業を請け負っているのに対し、左官屋は仕上げ作業を請け負うのが基本です。
左官屋が行っている主な作業として、左官壁の塗り上げがあります。左官壁とは漆喰・土壁・聚楽壁・小舞壁(竹を組んだもの)などのことで、断熱性に優れ温度を一定に保ち、湿度を調整するという長所を持っています。この左官壁を専用のヘラや鏝(こて)を使って塗り上げていくのが、左官屋最も有名な仕事のひとつです。
左官屋の歴史
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左官屋のルーツは非常に古く、縄文時代にまで遡ることができます。縄文時代に壁の材料として土が使われたのが飛鳥時代になってさらに技術が進歩し、安土桃山時代になると茶室に聚楽壁という壁が使われるようになりました。
江戸時代には漆喰が登場し、また壁を仕上げるための建築技術だけなく、鏝を使った鏝絵が描かれるなど芸術としての価値も高めました。
左官屋が使う道具
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左官屋の代名詞ともいえるのが鏝。実は海外にも塗り壁という技法は存在しているのですが、日本の塗り壁とは大きく異なっている点があります。それは、鏝の種類の豊富さです。
海外に比べて日本の鏝は種類が非常に多く、塗りつけ鏝・角鏝・仕上げ鏝・木鏝・面引き鏝・切り付け鏝など11種類の鏝を壁の材料や場所、工程などに応じて使い分けているのが特徴です。
例えば先端が細く尖っている笹刃鏝や柳葉鏝は細かい部分を塗るのに向いていますし、目地鏝(外丸・内丸・丸棒)はタイルやブロックなどの目地を塗るのに最適です。さじ鏝(面引き・ラオ面・玉鏝・耳かき)は鏝絵や漆喰に彫刻を施すことができるなど、芸術的な趣向を凝らすのに向いているものもあります。
そして、左官屋が使う道具の2つ目に練り鍬があります。練り鍬とは土や珪藻土など左官壁に使う材料を混ぜ合わせるために使う道具で、重いものは使いにくいが時間がかからず、反対に軽いものは使いやすさはあるが時間がかかるのが特徴です。
左官屋の現状
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左官屋は多くの伝統産業と同じように担い手を確保することに苦戦しているため、築業界の中でも特に高齢化が進んでおり、大変厳しい状況に置かれています。左官としての技術を継承する担い手不足の課題を改善するために、左官業界は従来の育成方法を見直し、現代にあった育成法であるモデリングを導入しました。
また以前は肉体労働のイメージが強く持たれがちでしたが、最近では漆喰の彫刻や鏝絵など芸術性の高さもクローズアップされてきています。こうした育成方法やイメージの変化に伴って、芸術志向の若い世代や女性などの新たな人材の獲得を実現しつつあるのです。
左官屋の魅力
左官屋は長い歴史を持ち、技術が進歩する過程で漆喰・土壁・聚楽壁・小舞壁などが生み出され、高い技法の上に芸術と伝統を築き上げています。ただ壁を塗るだけの地味で面白みのないぢごとに思われるかもしれませんが、左官としての技術を習得するためには10年単位の長い年月をかけなくてはいけません。それほど高度な技術を要求される仕事なのです。
一朝一夕に習得することができないからこそ後進が育ちにくくもありますが、なにか一つのことを極めて信頼を得る仕事がしたいと思う人には左官屋はもってこいです。日本人ならではの芸の細やかさを随所に感じながら仕事をすることができ、海外からも瞠目される日本の左官技術の高さを誇りに思えることでしょう。
職人気質な仕事がしたい、伝統文化を伝えられる仕事がしたいという人は、左官屋を目指してみてはどうでしょうか。
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