日本では古くから、種々の妖怪の存在が信じられてきました。 その姿は様々な創作の中で描かれたり、地方の伝説・伝承として口伝されたり、神社や神木など信仰の対象になっていたりとさまざまです。
人間にははかりしれないもの、自分たちの力ではどうすることもできないものの象徴である妖怪は、どのようにして生まれたのでしょうか。日本に伝わる妖怪たちを解説します。
日本における妖怪の起源
日本では妖怪はさまざまな書物や創作の中に著されてきました。多くの妖怪たちの起源になったのは「自然現象」です。 嵐や日照り、疫病の発生など、現代では原因が解明されている現象も、科学力の乏しかった時代の人々にとっては唐突に降りかかってくる災厄だったのです。
人は原因の分からない災厄を「妖怪の仕業」とし、恐れました。 また日本は四方を海に囲まれており、山地も多いため、自然現象による災害が発生しやすい国です。 日本の環境が、多くの妖怪を生み出すひとつの要因になったのでしょうと。
妖怪という概念がいつの時代に生まれたのか、はっきりとは分かりません。 とはいえ、平安時代に成立した『今昔物語集』には既に鬼などの妖怪が行列をなす「百鬼夜行」の存在を確認できます。 少なくとも平安時代には、異形の妖怪という存在が認識され、恐れられていたことが分かっているのです。
現世にあまねく溢れかえる妖怪の中に、「日本三大妖怪」として語られるものが存在します。 ここでは日本三大妖怪について解説していきます。
日本三大妖怪その1「鬼」
出典:さいたま市
鬼は、日本三大妖怪に数えられる迷信の一つです。大きな角や牙を持ち、顔は憤怒の表情で、超人的な怪力と金棒をもつ…というのが鬼の一般的なイメージです。節分や桃太郎などで畏怖の象徴として非常にメジャーな存在ですが、一方で「泣いた赤鬼」などの童話では心優しく、人を助ける存在として描かれていたりもします。
実は元々鬼には決まった姿がなく、「鬼」という言葉は本来「目に見えず、この世のものではない存在」を示していたそうです。 この世のものではない…というイメージが、次第に怨霊や、人に危害を加える存在へと変遷していき、現在の鬼の姿に収束したと考えられます。
日本三大妖怪その2「河童」
出典:イバラキノート
次に日本三大妖怪に数えられるのは河童です。
水辺に棲んでいて、頭に皿があるという特徴的な見た目のイメージは、全国共通のものです。きゅうりや茄子や相撲を好むといった性質も一般的で、人間の子供と遊んだり人の手助けをしたりするなど、善良な妖怪と伝えられることも度々あります。悪戯好きといった愛嬌のある描写も少なくありません。
河童が水神様として祀られている地域も多々あり、善良なイメージはこういった信仰からくるものと考えられます。 一方で、川に人を引きずり込み、尻子玉(架空の臓器)を抜くなど、人に危害を加える内容の言い伝えも各地に残されています。
また河童は「水神が落ちぶれて妖怪化したもの」といわれることもしばしばです。 聖なる神としての姿と、落ちぶれた妖怪としての姿。これらが同時に存在することで、善良なイメージと恐ろしいイメージに二分されたと考えられます。
日本三大妖怪その3「天狗」
出典:高尾登山電鉄
最後の日本三大妖怪は、天狗です。 赤い顔に高い鼻…というのが一般的なイメージです。 山伏に似た格好に一本歯の下駄をはき、空を飛んだり、木の上に立っているといった姿も有名です。 山に関わる伝承などに登場することが多く、山で起こる神隠しなどの不思議な現象は天狗によって引き起こされるものと伝えられています。
人をさらう、人肉を食べるなど恐ろしい存在として描かれることが多く、性格は傲慢で慢心も見えるといいます。「天狗になる」という慣用句もここから生まれました。 一方で山の神様として祀られる存在でもあり、働かない怠け者に罰を与えたり、子供の病気を治したりとするとも言われ、広く信仰を集めています。