【粋なフォント】江戸文字の流派や魅力を紹介

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「江戸文字」ってご存知ですか?落語の席、寄席、浅草雷門の提灯などさまざまなところで見かける極太の毛筆の書体が江戸文字です。実は暮らしのいろんなところに隠れている江戸文字、全部同じ書体ではありません。

ルーツを知るほどに愛嬌が出て可愛らしく見えてくる、そんな江戸文字についてご紹介します。

江戸文字とは

出典:写真AC

江戸文字とは、書いて名の如く、江戸時代に盛んに使用されていた用途の違う数種類の文字の総称です。 もともと江戸時代に使用されていた文字は、使用される用途や書体によって、何種類も別々の名称が使われていました。

江戸文字と呼ばれるようになった由来はいくつか伝えられており、ややこしいからまとめて江戸文字と呼ぶようになったという説や、徳川幕府が書簡の違いなどから争いがおきるのを避けるため公用文字として、文字の統一をはかったという説もあります。

日本らしさを伝える江戸文字のデザイン①

江戸文字にはいくつも種類があります。

【勘亭流(芝居文字)】


出典:写真AC

歌舞伎でお馴染みの文字です。安永8年(1779)、中村座春興行「御贔屓年々曽我」の絵看板で、岡崎屋勘六が中村座の依頼で生み出したのが勘亭流の始まりと言われています。

勘亭流のデザインは、太い筆に墨をしっかりとしみこませて、文字を内側に巻き込むようにして枠いっぱいに描かれています。はじめて見た方が感じる「なんて読めばいいんだろう?」と面食らう感じこそが、まさに勘亭流の魅力です。芝居通の遊び心が文字にでも出ているんですね。

日本らしさを伝える江戸文字のデザイン②

【相撲字(根岸流)】


出典:写真AC

こちらも、名前の通り相撲の番付で使用されている文字です。江戸の相撲番付は最初の頃は庶民にわかりやすい一般的な文字が使われていました。しかし、根岸兼吉によって相撲字が生み出されてからは行司の必須文字にもなりました。

相撲字のデザインは、直線的な肉太の線で力強く書かれており、隙間は作りません。相撲字の魅力は、文字が相撲を現している点です。隙間なく埋め尽くされた文字が、力士たちを現しているように見えてきませんか?

日本らしさを伝える江戸文字のデザイン③

【寄席文字(橘流)】


出典:写真AC

起源となっているのは、ビラ文字です。寄席のビラやポスターに書かれ、宣伝に使われていた文字です。寄席文字のデザインは右上がりの筆勢で、墨をたっぷりと使用して書き上げます。この時一気に書き上げるのが特徴です。寄席文字は、お客さんが文字のように一杯入るようにという意味がこめられており、余白が少ないのが魅力です。

日本らしさを伝える江戸文字のデザイン④

【籠字】

大きな看板や、提灯にかかれている文字です。一筆で文字が書きにくいため、ぼこぼこした提灯などに使用しますが、文字の輪郭を書いてから中を塗り込むといった手法が使われています。千社札で使われているのも、この籠字です。

文字を読ませることよりも複数の文字を抱いて一文字に造形するデザインを使っており、絵のような仕上がりになります。まさに、読ませるというよりも遊び心と洒落っ気がいっぱい詰め込まれているのが籠字の魅力でしょう。

江戸文字の書き方、体験、習える場所

江戸文字を体験する方法は今もあります。もっとも手軽なのは、通信教育でしょう。見本の文字をなぞっていくといった勉強法になりますが、江戸文字の書き方を実地に習得できます。

勘亭流を学びたい人におすすめなのは「江戸文字ワークショップ・勘亭流教室」です。見学も可能で、入会後は月2回程度稽古を受けることができます。東京都台東区にある生涯学習センターで受講できます。

橘流寄席文字を学びたい人には「橘流寄席文字勉強会」で開催されている教室がおすすめです。東急セミナーBE自由が丘・田中金華堂で行われているので、チェックしてみてください。

他にも住んでいる地域などで変わってきますが、ホームページで調べると意外にも情報は豊富に出てきます。

江戸文字を使った商品

江戸文字を使った身近な商品でもっとも手に入れやすいのは、千社札です。千社札を自分の名前で作ることもできます。他にも、お茶漬け海苔や「きんつば」など身近なものにも使われていることもあります。

ふるさと納税で、江戸文字を使用した名札を購入することもできるようです。意外と身近に使われている江戸文字、ぜひ探してみてはいかがでしょうか。

江戸文字職人さん

現役の江戸文字職人さんを紹介します。

江戸文字職人・鶯春亭梅八さん。「江戸文字職人梅八のブログ」を配信している職人さんです。あの「笑点」の文字もこの鶯春亭梅八さんが書いたんです。茨城県稲敷市切通し町の「えどさき笑遊館別館・蔵(くら)」にいらっしゃいます。

 

江戸文字職人・大石智博さん。アトリエ創藝館の親方を務める職人さんです。

 

江戸文字職人・加藤木さん。江戸文字デザイン展などで活躍している職人さんです。他にも現在江戸文字職人を目指して修行している若い人も多くいるため、これからどんどん増えていくかもしれませんね。

江戸文字の魅力

いかがでしたでしょうか。ご紹介した江戸文字はどれも遊び心があり、使う場所の魅力をしっかりと伝えてくれる文字ばかりです。街を歩いていても、なんとなく目をひかれる看板も江戸文字が多くあります。

そんな江戸文字の魅力にひかれて、習い始める人も少なくありません。ぜひ、興味のある人は江戸文字を勉強してみてはいかがでしょうか。現代では珍しい、素敵な特技になることでしょう。

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