「行灯」を見たことありますか?
たまにお盆などで仏間や表に飾られていたりもしますが、常用する人は少ないかもしれません。
しかし行灯は、クラシックな見た目に反して、意外にも現代の生活にもマッチする優秀な灯りです。今回は、さまざまな種類の行灯の魅了をご紹介します。
行灯とは
出典:写真AC
行灯とは、古くから使われている照明器具の1つです。
今と違いマッチなどもなかった時代、行灯が普及してからは生活が一気に便利になりました。「行」という字が入っている通り、持ち歩きながら使うことのできる照明で、持ちやすいように提げ手がついていました。
行灯が日本に普及してきたのは江戸時代と言われています。安価な燃料やランプが普及するまでは、どこの家庭でも夜は行灯を利用して生活をしていました。 炎が消えないようにするために木や竹を火皿の中に置き、火皿に油を注ぎながら灯芯に浸して使います。
室内に置いて使うこともあれば、壁に掛けたり、持ち歩いて使うこともありました。
行灯の種類
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行灯には、置行灯、掛行灯、遠州行灯、有明行灯、書見行灯、旅行行灯と6種類あります。
置行灯は縦に長い長方形の箱形をしていて、持ち運びして使えるように取っ手がついています。 掛行灯は、家の入り口や店の先、廊下など、主に大きな建物の壁や柱に掛けて使われていました。
遠州行灯は、二重になっている半円形の障子を回転させて光の量を調整できるようになっています。外枠は360度回転できるようになっていて、180度回転させると明るさが一番明るくなります。江戸初期の大茶人・小堀遠州の提案で作られたことから、遠州行灯と名前がつけられたのです。
有明行灯は、油皿を置く火袋の部分と外箱を取り外すことができるという特徴があります。四角形の木枠内に紙製の火袋が貼ってあり、木枠の外側と、内部の底に火皿を置く台があります。なぜ有明行灯という名前がついたかというと枕元に夜通し、夜明け(有明)まで灯していたことから、このように呼ばれるようになりました。
書見行灯は、読んで字の如く読書をするために使われていた行灯になります。枠板に開けられた丸い穴があり、その丸い穴がレンズになっていて、光を集めるようになっていました。
旅行行灯は旅人のために作られた行灯で、中には筆や鏡などの道具を入れることができるようになっています。
現代の行灯
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行灯からろうそくへ、ろうそくからランプへ、ランプから電気へと時代が変わるにつれて、行灯も少しずつ変化してきました。
行灯やろうそくなどは火を灯さないといけないため火事を誘発する危険があり、小さな子どもがいる家庭などでは安全を考慮して使用を避けるようになりました。また火は消えやすく、一度消えたら付け直さないといけないという手間もあり、本物の火を入れる行灯は電気の普及とともに減っていきました。
現在売られている行灯は、ほとんどがLED電球などを利用したコード式のものになります。
行灯の魅力
電気がある現代において、なぜあえて行灯を使う必要があるのかと思われるかもしれませんが、行灯の魅力は意外にもたくさんあります。
行燈はがっしりとした木枠づくりで、スタンド電球などより安定感があり、ワーロン紙貼りの色合いや木目の細工、三日月形の窓などが光に風合いを与えてくれます。
また、光が強すぎないところも良ポイントです。行灯を使うのは主に夜ですが、遅くまで作業や読書をするのに部屋の照明をつけるのは明るすぎて嫌だという人には、行灯の明かりはちょうど良いでしょう。
間接照明のようにぼんやりと優しく照らしてくれるので、部屋にクラシックな雰囲気がほしい人のインテリアにもぴったりです。
サイズや用途などによってさまざまなタイプの行灯があるので、ぜひお気に入りの一台を見つけてください。