浮世絵師の仕事|作業工程や現代の浮世絵師を紹介

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ゴッホやモネなどの海外の印象派絵画にも強い影響を与え、ジャポニズムの嵐を巻き起こした日本の伝統絵画・浮世絵。江戸から200年余りが過ぎた現在も、現代の浮世絵師たちの手によってその仕事ぶりは受け継がれ、今も世界を魅了し続けています。古き良き伝統を繋ぎながら、新風をどう吹かせるか。現代に生きる浮世絵師の仕事に迫ります。

浮世絵師とは

浮世絵師とは、浮世絵の原画を描くことを職業とする人のことです。 200年前に、庶民がフルカラーの印刷物を気軽に楽しめたのは、世界中でも日本だけでした。 浮世絵に使われる技術は日本独自のもので、他の絵画にこの技術を見ることは出来ません。 高度な印刷技術が多様化する現在においても、浮世絵の文化は職人たちの手から手へと 、今も大切に受け継がれています。

浮世絵師の仕事

浮世絵という高度な技術を持つ職人の仕事は、そのすべての制作工程が手作業で行われています。 浮世絵の真髄である伝統木版画は、「彫(ほり)」と「摺(すり)」という大きな二つの段階を経て作られます。その作業工程を見てみましょう。

【彫(ほり)の工程】

1. 版木にむらなく糊をのばします。 

2. 糊が乾かないうちに、版下絵を裏返しに貼ります。 

3. 手の平や指を使って紙を擦り取り、墨線だけを残して見やすくします。 徐々に紙が薄くなり、線が浮き出して見えてきます。

4. 版下絵に沿って小刀を入れます。

5. 複数の版をずれないように摺るための目印「見当」を彫ります。

6. 「さらい」と言う作業をします。 全ての線の両側に小刀で切れ目が入れ、鑿で不要な部分を取り除きます。 面積の広い部分を取り除く時には、小槌を使って行います。 細かい部分をさらう時には、透鑿(すきのみ)でも最小のものを使用して行います。

ここまでで全作業が完了し主版(おもはん)が完成となります。

【摺(すり)の工程】

1. 「とき棒」と呼ばれる道具に顔料をつけ、版木の上に運びます。

2. 版木に置いた顔料が乾かないうちに、素早く刷毛で版木全体に顔料を広げます。

3. 版木に付けられた二つの見当(右下角・下部中央)に合わせて紙を置きます。

4. 右手で馬連(ばれん)を握り、和紙の繊維の中まで顔料をきめ込んでいきます。

5. 力が馬連の中心に集まり和紙へと伝わるように、馬連に体重を乗せるようにして摺っていきます。

6. 摺りあがりの状態を確認します。

7. ずれがあった場合、見当の位置を修正していきます。

これで全工程が完了です。実にたくさんの段階を経てようやく一枚の浮世絵が摺りあがることがわかりますね。

浮世絵師の年収/勤務体系/福利厚生

浮世絵師として仕事を行っている職人の方は、 彫師や摺師など、それぞれ独立して自宅などで作業をしている場合がほとんどです。 また工房として複数の職人さんが共同で作業をしているところもあります。名が売れるかどうかで年収や働き方が大いに違ってくるので、確実かつ安定した収入は期待しないほうがよいでしょう。

浮世絵師のメリット・デメリット

メリットは、日本古来の伝統文化を受け継ぐという使命感や仕事に対してのやりがいがあることです。 ITやロボットの台頭が進む現代にあって、人間の手でものを生み出す職人としてキャリアを積んでいくことには、大きな誇りが伴うでしょう。

また浮世絵師として、その芸術性が高く評価され、幅広い分野で活躍する浮世絵アーティストなども出現しています。自分の才能を思うがままに発揮できるというクリエイティブなところもこの仕事の長所ですね。

デメリットは求人の少なさです。 若手育成、文化継承を行っている団体などもありますが、その数は圧倒的に限られています。継続して仕事が取れる保証もないので、リスクは避けられません。

浮世絵師に向いている人・向いていない人

浮世絵師に向いている人は、手先が器用で緻密な作業を続けて行うことができる人です。 細かい作業が要求される仕事なので、かなりの集中力を要します。 色彩感覚、センスもある程度必要となります。 集中力の欠けている人や、体を動かすのが好きな人には不向きと言えるでしょう。

浮世絵師の将来性

現在はインターネットでの浮世絵をオンライン販売しているサービスもあります。 オンライン、メール、電話にてのオーダーも可能で 今の時代とマッチした「こだわりの浮世絵」を提供しているなど その「売り方」も時代のニーズに合わせて変わってきています。

浮世絵師になるには

浮世絵師になるには、特に資格は必要ありません。 どのようにして浮世絵師になりたければ、次代を担う若い技術者を育成する事業を行っている工房などで経験と技術を学ぶか、 浮世絵師の師匠に弟子入りして、職人になるなどの道があります。

また絵画に関する知識はもちろん必要になるので、美術系の専門学校や大学に進み、技術と知識を学ぶことも必要になるでしょう。

現代の浮世絵師を紹介

現代の浮世絵師として活動し、世間の耳目を集める人もいます。著名な浮世絵師二人をご紹介しましょう。

【山田全自動】

山田全自動さんの数ある作品の中で特に有名なのは、ちょんまげの人たちが普通に現代社会で暮らす様を描いた「あるある浮世絵」です。シュールさが評判を呼び、話題となっています。

【島崎良平】

現代浮世絵師として活躍する島崎良平。 個展を開く度に注目を集め、その芸術性が高く評価されています。 デジタルとアナログを融合した独特の手法で日本の美を表現しているアーティストです。

浮世絵師になる魅力

浮世絵という日本独自の文化を世界にアピールしていくことも、 インターネットの普及で以前よりずっと容易になりました。 海外では日本文化への関心や興味が、実際に日本で暮らしている私たちの想像以上に注目されています。 浮世絵師はこの素晴らしい文化を継承し広めていくことのできる、魅力ある職業のひとつ言えるでしょう。

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