日本の文化を語る上で欠かすことのできない着物。
現代においては、普段着としてなかなか着られることが少ないですが、晴れ着としての着物の価値は、依然として変わっておらず、価値ある伝統文化として受け継がれています。
成人式、卒業式、結婚式などのお祝いの際、街で時折見かける着物の女性たちは、一際目を引き、その美しさに見とれてしまいます。
今回は、そんな着物の素材であり、重要な部分である、着物の「生地」をテーマとしてお話し致します。
着物に使われる生地の種類を紹介
出典:ぱくたそ
洋服であれば、時と場合に合わせ着る服の種類を変えることは一般的です。
実は着物においても、シーンによって着るべき着物の種類があり、それぞれに合った着物を選ぶことになります。 そこで重要となるのが、着物の生地に関する知識です。
着物の生地となる主なものは、 絹、木綿、麻、綿麻、羊毛、ポリエステルなどです。 着物を選ぶ際にも生地の特徴を知っていれば、その場面にあった生地のものを選ぶことができます。次に生地ごとの特徴を紹介します。
生地よる着物の着心地とは?
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体にフィットして動きやすい絹
絹は、非常に気品のある生地で、着ている人に上品な美しさを与えます。
体になじみやすく、動きやすいという特徴がありますから、普段着物を着なれていない方でも、すんなり体にフィットする生地と言えるでしょう。生地自体は、美しい光沢があり、華やかさがあります。
デメリットは、湿気に弱く、傷みやすいという点がありますので保管するには、十分気を配る必要があります。
肌触りが気持ちいい木綿
最もスタンダードな生地が「木綿」です。 木綿は、通気性、吸水性が優れています。着心地は、肌触りがよくさらっと着こなせます。 また生地として強い耐久性も備えています。 デメリットは、縮みやすくシワになりやすいことです。
通気性抜群な麻
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麻は、通気性に優れていますので、こちらも着心地は柔らかく着やすくなっています。しかし、弾力性がないため、シワになりやすく、色落ちしやすいというデメリットがあります。
シワになりにくい!綿麻
綿麻は、吸湿性がよい生地のため、肌触りがとてもよく、着物としても着やすい素材です。 綿と麻が混ざりあっているのでそれぞれの特性を生かし、相乗効果のある生地です。 シワになりにくいことも特徴です。
冬に最適!羊毛
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羊毛は、他の生地よりも温かく、寒い冬の日などに着るには最適です。 また吸湿性が高いのも特徴です。 デメリットは虫に弱く、耐久性も乏しいことです。
お手入れが簡単なポリエステル
ポリエステルは、洋服の素材としても多く利用されており、普段から着なれているので、着ていてあまり違和感がないというのが特徴です。
ポリエステルは、洗濯もできるのでメンテナンス性に優れた生地と言えます。 デメリットは保温性と吸湿性が乏しいことです。
また、着物の絵柄が映えにくい生地とも言われています。
浴衣と着物、生地の違いは?
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皆さんは、着物と浴衣の違いをご存知でしょうか?
なかなかその違いを説明できる人はいないかもしれません。着物のイメージとして、華やか、綺麗、品がある、などが一般的です。 一方、浴衣は、夏、花火、爽やか、かわいいといった印象があります。
このようにイメージだけでも、かなり異なる着物と浴衣、その違いは何なのでしょうか。
着物と浴衣は、同じ着物ではありますが、その違いは、浴衣はカジュアルな着物であるということになります。 洋服で言えば浴衣は、ジャージやジーパンと言ったところでしょうか。
さらに、浴衣は中に下着以外を着用しないのですが、着物の場合は長じゅばんと言われる物を下着以外に必ず着用します。また、生地の違いは、以下のようになります。
【浴衣】 綿、コーマ、綿麻、ポリエスエステルなど
【着物】 絹、木綿、ウール、ポリエステルなど
生地の違いだけを見ると少し分かりにくいかもしれません。
どのように着物の生地を選べばいいのか?
着物といっても、種類は様々あります。 着物は、着る目的や季節などそれぞれのシチュエーションによっても選ぶ着物や生地も変わります。
日本には四季がありますから、 季節によって、着物の生地も厚手から薄手に変えるなど、 生地の素材や種類、格式と季節などを考慮し、シーンに合わせた着物選ぶ必要があります。
有名な着物生地の産地を紹介
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日本全国には、着物の産地として有名な場所がいくつもあります。 今回はいくつかをピックアップして紹介します。
北海道 「アツシ織(厚司織)」
厚司織はもともと。労働者の仕事着として多用に使われていました。 地厚な木綿の平織り、または綾織りで、紺無地や大名縞などの単純な柄が多く、 厚手で素朴な色合いが特徴的です。
宮城県「栗駒正藍染」
栗駒正愛染は、奈良時代に行われていた技法を今に受け継ぐ自然の正藍染で、非常に歴史の重みを感じます。 気温の高い真夏の2ヵ月間だけ、藍を桶の中で自然発酵させて染めるのが特徴です。
着物にはいろいろな織り方の種類がある
羽二重(はぶたえ)
たて糸とよこ糸を交差させて、織る布です。平織でつくられ、糸が絹を使用している場合は「光絹(こうきぬ)」といい、高級な呉服に利用されます。しっとりとしており、なめらかな肌触りが特徴で、礼装の一つでもある留袖には着、物の裏地に使われたりしています。
縮緬(ちりめん)
たて糸に撚り(より)がない糸、よこ糸に撚りが強い糸を使用した平織の織物です。撚りをつけている糸と撚りがない糸を利用するので、表面に細かいしぼ(凹凸)が生まれます。
主に高級な呉服(色無地、留袖、訪問着)など使われる生地です。縮緬(ちりめん)は一般的に、白生地で織り、後から染めます。価格の抑えた生地では、ポリエステルやレーヨンの縮緬(ちりめん)もあります。
お召し
お召しは、高級な絹織物で縮緬の一種です。糸を先練り(さきねり)先染め(さきそめ)を行っており、非常に高級な糸です。縮緬より生地にコシがあり、しぼが細かいです。「お召し」という名称は、徳川家斉公が好んで着ていた(お召しになった)ことから来ています。
和装は、糸の先染めを行ってから織る「織り」より、白生地を後から染める「染め」の方が、格の高い生地とされています。しかし、お召しは例外で、略礼装にも使用されています。
紬(つむぎ)
紬は、紬糸(つむぎいと)を使用して織った絹織物をさします。紬糸は撚りをかけた糸のことです。おしゃれ着用の生地として、最高級の生地です。生地には、独特の風合いがあります。高価な理由は、作るのに手間がかかり、織りと呼ばれる製法を利用しているので、洒落着として好んで着られています。
紗(しゃ)
紗は、「もじり織り」と呼ばれる織り方で作られた、絹織物です。これは、糸の間にすきまを作る手法で、薄く張りがあり、通気性の良い、機能があるので、夏の着物や雅楽の衣装に使用されます。
絽(ろ)
紗と同じ「もじり織り」という生地で織られた着物です。夏を感じる着物になっており、素材は絹・綿・レーヨンを利用しています。薄手で軽く透け感のある着物です。
季節によって生地の変化を楽しめる着物を着よう
出典:ぱくたそ
着物は、季節による素材の変化を楽しむことができます。 古くから伝わる日本の伝統文化として、着物の奥深さと美しさは、日本人の生き方や特性を非常によく表現したものです。
この美しく品のある着物を、後世までしっかり受け継ぎたいものです。