宮司とは
宮司とは、ある神社を管理し、神職や巫女などを統括する責任者のことを指す職業のことです。一般的には神主と間違われることも少なくないものの、近ごろは神社のなかにおいて最も身分の高い人物とされています。
神主と間違われているとはいっても、過去ではその意味がほとんど変わりありませんでした。なぜなら、神主も神社を代表する旨の意味があったからであり、戦後間もなく、制度確立によって正式名称としての神主という名称が撤廃され、宮司という階級が誕生したのです。
宮司とは、宗教法人として役員に相当します。神社のうちの大部分が、神社本庁に属しているのですが、この神社本庁により拝命されることにより宮司になれるのです。宮司以下の神職の階級には、順次、権宮司や禰宜、権禰宜や宮掌、最後に出仕というものが存在しています。
最後の出仕が一般的な職業でいうところの研修生に相当するものであり、権禰宜を上回れば、れっきとした神職となるのです。
宮司の仕事内容
宮司は、神社において統括することがその職務なのですが、神事や祈祷などといった祭事のほとんどを取り扱っていきます。そのほか、一般的な職種同様に法人事務をも実施しています。
祈願所に文言を記載することや、祈祷や祈願などのほか清掃活動なども宮司が行う場合があります。そもそも神社には古来より、人間を看守し続けてきたという伝統を有するとともにその神社固有の神が存在しています。
この神社を手入れを怠ることなく維持し、伝統を保護することが宮司をはじめ、神職のする職務なのです。
こうした姿勢が、神主などと称されるようになったのです。いわば、神職とは神主のことを指すものであり、神社への来訪者に対して快く参拝し得るように配慮して、神社を運営していくことが宮司の職務のひとつといえます。
我々の日常からすれば、安産祈願やお宮参り、七五三や合格祈願などといったように諸々の神事に接する機会が顕著です。そのほか、神式による結婚式や自宅の新築、交通安全祈願のようなものに至るまで、多種多様な機会が存在しています。
これらの行事に対して、儀式を実施しながら、集まった人々に対して案内や指導、教示などを実施することもその職務内容です。
宮司の年収
宮司の年収は各神社によって異なっています。なぜなら、神社ごとに独立しているからです。その収入源については、上記で述べたような神事に対して得られる祈祷料や、商品販売からの利益が大半を担っています。
そのため、人気や流行などによっても左右されてきます。巧みな経営手法により、高収入が見込めそうなのですが、神社本庁によって月収60万円という制限が課せられており、年収に換算すれば、多くて720万円となっています。
ただ、神社に務めている場合にも一般企業同様に副業規定に相当する規定が設けられています。学校法人において教職員に従事することは基本的に禁じられてはいるものの、神職に至っていれば、この限りではありません。
なぜなら、神職であれば営利を貪るものではないとみなされているからです。神社の敷地内に学校法人を併設することによって、教職員に就業しているケースも多いようです。宮司も教職員も伝統や儀礼を重視する性質上、共通項も少なくないことから、宮司で培った精神を教育分野に活用することに期待できます。
教育分野に神道を積極的に採用していくことは人間としての生き方を模索する上では相当有用といえるでしょう。宮司は神職といえども、生活の保障がないどころか、それぞれの神社に応じて収益が異なるために、万一、収益がない状態に至れば廃業せざるを得ません。
このような廃業の危機を脱するためには、第三者からの寄付に期待しなければならないのです。この寄付ですが、どのような人でもなれるというものではなく、神社に氏子や崇敬者として請願する必要があります。
宮司になるメリット
宮司のメリットとしては、上記で述べた賃金に係る規定のために収入に上限があるものの、賃金に含まれない奉納品など供物の提供があることです。
奉納品の種類には、コメや野菜、それにお神酒などといったものが用意されており、宮司の生活からすれば、決しておろそかにはできないものなのです。
反面、デメリットとしては、実際の運用上300万円を下回ることも少なくないことから、一箇所のみではなく多数の神社を兼ねている場合もあります。過疎地域などでは収入に期待できないことから、サラリーマンなどをしながら兼業している宮司も存在しています。そのほか、学校法人で教員となっている宮司も少なくありません。
宮司に向いている人
宮司を含めた神職に対する一般的なイメージは、世俗を離れているものと認識されていることが少なくないでしょう。いずれの神職であろうとも、ただただ孤独に神道を信仰しているものと考えられていることが通常です。
このように研究に勤しむことも宮司としては不可欠ではあるのですが、これのみでは宮司として勤務することは不可能です。それというのも、宮司という職掌上、不特定多数の人と関わる必要があるからです。
また、氏子とのスムーズなコミュニケーション能力も必要となってきます。なぜなら、氏子は神社の運営に密接に関わってくるもので、一般企業でいえば出資者に相当するものだからです。
また当然ながらも、神事に勤しむなど、伝統を重視することも求められてきます。これは一般の認識同様のものであり、伝統に強固な関心がなければ宮司は務まるとはいえません。しかし、このような適正は宮司を志すからには、最初から有していることがほとんどといえるでしょう。
さらに、宮司となるには、奉仕精神が豊富に備わっていることも求められてきます。受動的ではなく自ら行っていく滅私奉公の精神があれば、宮司の適正があるといえます。
宮司の将来性
神社の大部分は神社本庁によって統括されているのですが、現状は神社の数が8万程度、それにひきかえ神職は2万人程度とされています。
そのため、数値の上では人数が不足しているように見られ、理論上は6万もの神社が無人のものとなっています。ただ、無人のようでありながらも、形式上神職は存在していることになっています。
一人が多数の神社の宮司を兼ねていることも多く、これが神社の数と神職の数とで大きな乖離を生じさせている理由です。よって、神職の数そのものが不足しがちであるように見られても、神社には採用枠はほぼ設けられていません。
現状は神職の大部分が、世襲制に近い運用を採用していることから、何らかのつてがない限りは、宮司にはなり難いといえます。しかし、世襲制が用いられていたことを反省し、神社本庁に統括されている神社についても、一般から募集をかける事例が増加しているようです。
このほか、神社本庁に属しない神社では、一般からの採用枠を設けている余地が大きいです。
宮司のなり方
当項目では宮司になる方法について解説していきます。
結論を述べてしまえば、神社本庁により規定された免許を要します。この免許を得られることを前提に学習できる機関も存在しています。この専門の学習機関ですが、入学時点では何ら特殊な規定はなく、試験にさえ受かれば、神社とは無関係であっても、資格を得るために学習できるのです。
具体的に列挙すれば、宮司を含む神職に関する資格を得られるのは、渋谷区に所在する國學院大學の神道文化学部、それに三重県に所在する皇學館大学の神道学科などが該当します。これらの大学で単位を取得することにより神職階位のうち生階に至ることが可能で、さらに実習経験を経て、明階に至ることも可能です。
この階位とは、宮司に至るためには不可欠な概念といえ、いわゆる資格それ自体を指します。順次、高位なものから浄階、明階、正階、権正階、直階などといったように全部で5段階のものが存在します。このうち、正階を上回る階位が宮司になることができます。
それ以上の明階であれば神社本庁の宮司にもなることが可能なのです。よって、宮司になるためには、生階以上の資格を取得しておく必要があるわけです。大学以外にも、各神社によって設けられた専門の学習機関が全国に6つ存在しています。
ただ、これらの機関には入学する際に推薦が求められてきます。その推薦とは、神社本庁による推薦状のことです。
女性でも宮司になれるのか
女性神職は歴史が浅く数が少なかったのですが、現在では徐々に増加傾向にあります。昔から女性宮司として後継することはタブー視されていました。なかでも皇家と密接な関連性を有する神社であれば、より女性の跡継ぎは承認されない傾向があります。
ただ、資格自体は得ることが可能であるばかりか、女性宮司は禁止されてはいません。神社本庁による規定上でも男女問わず宮司になれますし、女性のみで構成された親睦団体も存在しているほどです。
宮司の服装は?
宮司の服装は、神職の階位に応じて袴のカラーが異なってきます。最も階位の高いものとして、白藤紋の特級を筆頭に、順次紫藤紋の一級、紫藤紋の二級上、浅葱の三級、紫の二級が存在しています。
なかでも特級は、相当規模の大きな神社の宮司でなければ着用を許されません。一級以上のものが宮司となっています。このほか、正装、礼装、上装という概念もあり、順次規模の大きな催しごとによって、使い分けられます。
歴史ある宮司の仕事も変化している
以上のとおり、宮司を職業という見地から見てきました。神社を司る宮司は、その性質上から一般的に親しまれていない用語が飛び交ったことだと思います。
衣装もそうなのですが、神職は階位などに応じて序列化されています。そして、神社は日本古来の伝統を重視していることから、これに携わる宮司は相当重要な職務といえます。
その給与体系についても原則は神社本庁によって規定されているのですが、教職員に従事したり奉納品なども宮司の選択と余地といえます。さらに、今後は、女性宮司の活躍にも期待できる余地があるといえるでしょう。
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