薬草・菓子・料理 様々な用途に使える「吉野本葛」を紹介

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奈良県の吉野地域、現在の宇陀市を中心に、この一帯で作られる葛粉を吉野本葛といいます。その歴史はふるく、かつては薬草として用いられましたが、現在では料理や菓子の原料として幅広く利用されています。葛の歴史や製法について説明します。

葛根湯にも使われる?吉野本葛の歴史

井植雅子さん(@masakoiue035)がシェアした投稿

吉野本葛は「葛(くず)」というマメ科のツル性植物の根ですが、奈良県吉野地域に自生している葛を使った吉野本葛は、吉野川の清流と寒冷な気候が葛粉を作るのに適していて、南北朝時代には既に製造されていました。根の部分が葛粉になりますが、茎や花も食べることができ、春の七草にも葛が入っています。

昔は、葉は家畜の餌としても使われました。そして、葛は風邪のひきはじめに効くという漢方薬の「葛根湯」にも葛が入っていますが、昔は薬草として用いられることが多かったそうです。米や麦に代わる食品としても食べられていましたが、それは、葛には体を温める作用があるからです。

その後、安土桃山時代に入ると、茶道文化の発展に伴い、葛焼きや葛練(くずねり)、葛餅など、葛を原料にしたお菓子も作られるようになりました。そして、江戸時代には、葛は次第に吉野以外の場所にも広まり、贈答品として使われていたという文書も残っています。

やがて、江戸時代後半になると砂糖の製造も盛んになって、葛を使った菓子も盛んに製造されるようになりました。特に、京都の京料理は見た目の美しさも重視したため、吉野葛を使って固めたり、とろみをつけたりした料理は、「吉野仕立て」と呼ばれて、料理人たちが好んで使用したそうです。現代では、料理や菓子の原料として使われるほか、葛布という葛の繊維質を利用した布も作られています。

「吉野本葛」と「吉野葛」の違い

吉野には「吉野本葛」と「吉野葛」、2つの異なる名称の葛粉があります。「吉野本葛」は100%葛の根から作られているのに対し、「吉野葛」は葛の粉だけでなく、さつまいものでんぷんである甘しょでんぷんを混ぜたものです。

純正の吉野本葛と、甘しょでんぷんが混じったものを区別するために、二つの名前で呼ばれるようになりました。いずれの製品にも吉野葛が入っていますが、観光客用に甘しょでんぷんだけを使った吉野葛に似たものも「葛類似品」として販売されています。

葛粉は価格が高いのですが、甘しょの割合が増えるに連れて安価に作れるからです。また、吉野地域以外でも葛の産地はありますが、吉野、あるいはその周辺で作られた葛だけが「吉野」という名前を冠することができます。

吉野本葛の作り方

ここでは、吉野本葛の作り方について説明します。まず、葛の根を掘り起こし、次にでんぷんだけをもんで取り出します。その後、水にでんぷんを入れて混ぜ、沈殿するのを待ちます。この工程を「吉野ざらし」と言い、最初は茶色い泡が出て来ますが、この工程を何度も繰り返している内に、真っ白な葛だけが取り出せるようになります。

この吉野さらしは、水道水で行っている工場もありますが、厳冬期に地下水だけを使って、手でさらす伝統的な手法をいまも続けているところもあるそうです。まだ自然が多く残っている、吉野地域の純度が高い地下水も良質な吉野葛の精製に役立っているのですが、冷水にさらすことで雑菌の繁殖も抑えられるという理由もあります。

取り出した葛は、乾燥する前に適当な大きさに切られ、水分が16%になるまで乾燥されます。こうして作られた葛粉は、水に砂糖と一緒に入れて、加熱しながら撹拌すると、粘り気のある葛練りができます。

お湯の量が多ければ葛湯として楽しんだり、少なくして葛練りのまま食べたりすることもできます。また、冷やし固めて葛餅や葛きりなどのお菓子を作ることもできます。葛粉に砂糖を混ぜて、木型に入れて固めた干菓子は、茶席のお菓子や結婚式の引き出物としても用いられることもあるそうです。

伝統的な製法で作ると「吉野さらし」の工程だけで2~3週間かかると言われているのが吉野本葛です。不純物を取り除いた後に小さく切って、さらに寒風にさらして乾燥するという、伝統的な製法で、手間暇かけて作られる吉野本葛。夏には夏の、冬には冬の食べ方で楽しめるのも嬉しいところですね。

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