西陣織とは何か
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西陣織とは京都・西陣で生産される高級絹織物のことであり、伝統工芸品の一つです。その特徴は多品種少量生産な点にあり、糸をを染めてから織る先染(さきぞめ)という方法で作られる京都産の紋織物を総称して西陣織と呼びます。
その様式は豪華絢爛で緻密なものが多く、着物だけでなくネクタイや財布などにも適用されており高級感溢れるものとなっています。また、ファッションの国・フランスのショーにも進出するほど注目を浴びている伝統工芸品でもあります。
<西陣織の種類>
西陣織の手法には、平織、綾織、朱子織、綴、緞子、錦、金襴などがあります。
西陣織職人の仕事
京都の伝統産業の特徴的な体系として分業制が挙げられますが、西陣織もこの業務形態をとっています。図案から製織や仕上げに至るまでの仕事を分類し、それぞれのスペシャリストを配置することで技術力向上や作業の効率化に繋がっていくのです。
西陣織ができるまでの工程を大別すると、①企画・製紋、②原料準備、③機準備、④製織、⑤仕上げに分けることができます。
<企画・製紋>
全ての基盤となる図案のデザインや機械に指示をするための紋紙の制作を担う工程です。まずは図案を作成し、その図案を元に方眼紙に色を塗り分けて意匠図を作成していきます。
意匠図が出来上がると、それに基づきジャカード機に経糸の上げ下げを指示するための穴を紋紙へあけていきます。
<原料準備>
次に、糸を染める段階へと移ります。決定した柄の色に忠実に糸を染め上げるこの工程は非常に重要なものとなります。また、色合いだけでなく絹糸の風合いを出すのもこの段階です。原糸の「セリシン」という物質を溶かして絹糸に仕上げていきます。
<機準備>
原料準備が終わると、織機に糸をセットしていく作業に入ります。「製経」と呼ばれる工程では、西陣織で使用される3000~8000本の経糸を準備します。そしてたて糸を織機に繋げていき、製織作業のための準備が完成します。
<製織>
いよいよ製織工程に入ります。ジャカード機にセットされた紋紙の指示によってたて糸が上下し、そこによこ糸を通して布を織っていきます。また、複雑な柄の織物は力織機では織ることができないため手機によって織られます。
<仕上げ>
最後は出来上がった織物に風合いを出す工程です。この工程を必要としないものもあれば、西陣織の独特の風合いを出すために湯や蒸気の中を通すものもあります。
ここまでが大まかな西陣織職人の仕事です。
西陣織職人のなり方
基本的には求人を探して弟子入りするという方法を取ります。高校を卒業してからすぐに弟子入りするという手も、美術大学や専門学校などで知識を蓄えてから弟子入りするという手もあります。
美術大学などに通っていると美術・工芸に携わる人との繋がりができやすいので多少有利かもしれませんが、西陣織は現在後継者不足という厳しい状況に置かれているので、技術を継承したいという強いやる気があれば西陣織職人を目指すことができます。
求人の探し方に関しては、近年ではネットで簡単に求人を検索できるようになりました。伝統産業の求人も例外ではなく、様々な求人サイトで探せばちらほら存在します。
さらに、最近ではSNSの拡散力の強さから、SNSによって技術継承者を募集する企業も増えてきました。西陣織においても、職人が後継者不足の深刻さを懸念し、SNSで弟子を募集したことが以前話題になっていました。また、伝統産業関連に特化した求人サイトなども存在するので、そこで集中的に探してみるのも一つの手です。
西陣織職人の気になる給料
職人世界は薄給であるというイメージは間違いではなく、実際厳しい収入であることは否定できません。特に技術を学ぶ間は低い収入で働かなくてはいけないことが多く、これを理由に退職や転職をする人も多いです。
前述した、SNSで弟子の募集をかけた西陣織職人も「最初の半年間は給与が出ない」などといった内容を投稿しており、多くの批判を受けて炎上することになりました。後継者不足の大きな要因となっている給料の問題はなかなか改善されない部分ではあります。
しかし、このような伝統産業は現在再び注目を集めてきています。補助金が出るなど、少しずつではありますが京都市をあげて守ろうとする姿勢も表れてきています。
職人になるということ
若い世代が技術を継承していくことで伝統産業の新たな道が見えてくることがあります。海外からの観光客が増えている今、世界的に日本の技術や文化へ注目が集まってきており、外国人観光客への伝統産業の工房見学も積極的に行われるようになってきました。
今や若い世代の発信力は強力なもので、こういった日本が誇る技術をこれまで以上に発展させていくことができる可能性を秘めています。「職人ってかっこいい」、「特別な技術を身に付けたい」などきっかけは何でもいいのです。興味を持ってみることが第一歩になります。
まずは身近な西陣織体験などで、伝統工芸品を自らの手によって作り上げる楽しさを味わってみてはいかがでしょうか。