手仕事が生み出す伝統美「京からかみ」のある暮らし

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京からかみは、絵の具、道具、文様すべてに伝統が受け継がれ、一枚一枚が手仕事によって生み出される、長い歴史を持った加工紙です。

日本では古くから、ふすまや屏風などに用いられてきました。美しいだけでなく、温もりも感じられる京からかみは、現在、壁紙をはじめ、室内装飾にもよく用いられています。
古典的なのにモダン。そんな京からかみの魅力をご紹介します。

京からかみの歴史

京からかみは、奈良時代に中国から伝わった「唐紙(からかみ・とうし)」を元に、平安時代ごろから作られるようになりました。伝来した当時は紙が貴重だったこともあり、使えるのは貴族や上流階級の人々が手紙や写経をするのに限られました。しかし、京からかみが作られるようになると、貴族が住む家のふすまや障子にも使われるようになりました。

時代とともに、公家以外にも武人や茶人へと浸透していき、江戸時代には、庶民にも親しまれる存在となります。洛北・鷹峯には、本阿弥光悦らによって「芸術村」が築かれ、光悦桐や光琳松、光琳菊など、今も活用される意匠が数多く生まれ、日本独自の美が発展しました。現在は室内装飾としての新しい用途も生まれ、伝統の技は守られ続けています。

京からかみの手法

京からかみは、版画のように文様を摺り上げてつくられます。伝統文様を手彫りした版木や、使用される顔料、一枚一枚手の平を使って文様を摺り上げる手法は、京からかみに受け継がれている伝統です。

1. 絵の具をつくる
まずは接着剤となるノリをつくり、そこに雲母(きら)や胡粉(ごふん)などの顔料を調合し、色調を整えます。雲母は、通常「うんも」と呼ばれる鉱物で、京からかみを作る上で欠かせない顔料です。
2. ふるいに移す
調合した絵の具は、専用の刷毛を使ってふるいに移します。
3. 版木に移す
ふるいを版木に軽く押し付け、色を移します。
4. 紙を置く
版木の上に和紙や鳥ノ子紙などをおろします。
5. 手の平で摺る
手の平でなでるようにして摺り、柄をつけていきます。手の平を使うことで、べったり均一な印刷のような仕上がりにならず、少しムラや量感のある模様を生み出すことができます。
6. もう一度紙を置き、手の平で摺る
摺った紙をめくり、再びふるいの絵の具を版木に移し、もう一度紙を置き、手の平で摺ります。わずかでもずれると、柄が切れたり、重なったりして作品にはならないので、職人の技が光る場面です。同じ模様を二度摺るのは、京からかみの特徴である、ふっくらとして立体的な質感を生み出し、あたたかみのある風合いに仕上げるためです。
7. 摺り上げた後、乾燥させる
摺り上がったらそっとめくり、乾燥させます。

京からかみの種類

京からかみの文様には、古代から用いられている中国的な文様をはじめ、さまざまな種類が存在します。中でも桐の紋様は、身分の高い者にだけに使用が許されたため、数多くのアレンジがなされてきました。

そんな数多い文様の種類ですが、使う人の生活感覚や社会的地位、どんな部屋に使用するかなどによって、用いられるものは異なりました。今でも、公家好み、茶方好み、寺社好み、武家好み、町家好みとそれぞれの身分の人たちが好んだ文様の種類が分けられています。

公家好み
公家好みは、公家たちが好んだ文様のことです。有職文様のような、優雅で気品のある文様が好まれました。例えば、菊、桐、竹、松、楓などの草花紋、菱、角、円、七宝などの幾何学紋を組み合わせたものや、鶴、青海波、雲文などです。

茶方好み
茶方好みは、茶人たちに愛された文様です。茶方好みは幾何学紋より、植物文様が多いです。繊細で洗練されたデザインのものが多く、茶道の家元は独自の柄もつくり出しました。有名なものだと、表千家好みの千家大桐や、裏千家好みの四季七宝、武者小路千家好みの吉祥草などです。

寺社好み
京からかみは、寺社でも用いられました。寺社は広い空間も多いため、瑞雲や霊芝雲など、雲をモチーフにした大柄の文様が好まれました。ときには金箔や銀箔も用いられることがあります。

武家好み
武家好みでは値引松、紗綾型など、少し硬さのある幾何学紋が多く用いられました。武家らしく、男性的な雰囲気が特徴です。

町家好み
町人たちが好んだとされる町家好みの種類は、花鳥風月、四季折々の文様など多岐にわたります。どちらかというと寺社好みとは反対の、小柄でつつましい印象のものが多いです。

京からかみのある暮らし

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伝統的な京からかみの使い方としては、寺院や茶室のふすまや屏風、衝立などに使われてきました。しかし現在は、ホテルや一般家庭でも、壁紙や照明など、インテリアとして使用し、室内装飾に取り入れることが増えています。

ほかにもポストカードや便箋、ポチ袋など、手軽に手にできる大きさ、価格の京からかみ製品もつくられ、その用途はさらに広がっています。

京からかみの体験

京都市内には、京からかみの製作体験ができる施設「唐丸」があります。施設は、ふすまや表具などを手掛けている株式会社 丸二が運営しています。唐丸では、版木の小判摺り体験や、はがきづくり体験などができます。京都観光の際に足を運ぶのもおすすめです。

唐丸(運営:株式会社 丸二)
所在地:〒600-8076京都市下京区高辻通柳馬場西入泉正寺町460
営業時間:10:00~17:30
体験料金:1,800円~
定休日:月曜、日祝日、盆正月
お問い合わせ:075-361-1324
URL:http://www.karamaru.kyoto/index.html#top
http://maruni-kyoto.co.jp/

室内装飾の粋。京からかみ

masakokanoさん(@m_ka_no)がシェアした投稿


日本語には、「きらめく」という 言葉がありますが、京からかみに使われる顔料の雲母は、うっすら上品に光る特徴があります。

かつて電気のなかったころ、人々はろうそくのほの暗い空間で過ごしていました。京からかみは雲母によって、ろうそくの明るさでも唐紙の文様が浮かび上がり、炎のゆらめきにあわせてきらめき、情緒のある空間を演出したそうです。

現在も、その上品なきらめきと手仕事で生まれるあたたかみは、私たちの心を和ませてくれるはずです。京からかみは、壁紙やふすまなど、室内装飾の中でもわき役と呼ばれる部分に使うことが多い存在です。ですがそのきらめきは、主役にも近い美しさがあり、取り入れればきっと粋な空間が生まれることでしょう。

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