姫路でつくられる姫革細工は、職人の伝統の技と美しいデザインがマッチした伝統工芸です。真っ白な見た目と、鮮やかな色彩。革小物ならではの、使うほどに生まれる渋みとツヤ。軽いのに丈夫で、一度持つと長持ちすること間違いなしの姫革小物をご紹介します。
姫革細工の歴史
姫革細工は、兵庫県姫路市でつくられている伝統工芸品です。漂白や染色をしない、真っ白な牛革に、美しく彩られた型押しの絵柄が特徴の革細工です。世界文化遺産であり国宝である姫路城が示すように、姫路は長く城下町として栄えてきました。
そんな姫路で、姫革細工は大変古い歴史を持ち、4,5世紀ごろにはすでに白鞣(しろなめし)の特産地だったそうです。というのも、元々市内を流れる川が、生野銀山から流れ出るミョウバンを含んでいて、それが牛革をなめすのに適した水質だったからなのだそうです。
姫革細工は、戦国時代や安土桃山時代のころになると、武将の甲冑や馬具に大変重宝されました。デザインの美しさと丈夫さを兼ねそろえていたことも、影響しているかもしれません。江戸時代に入ると、武具だけではなく、煙草入れや文庫などの日用品もつくられるようになり、より凝った作品が生み出されるようになりました。
現在も、花瓶敷やテーブルランナーといった生活用品から、バッグや財布、ポーチ、ブックカバーなど、さまざまな作品がつくられています。
姫革細工の特徴
姫革細工は、5工程に分かれた生地づくりに伝統の技が詰まっています。一つひとつの工程を、職人たちの手仕事によって行うことで、白く輝く姫革細工ができあがります。
1. 荒裁ち
最初の工程となる「荒裁ち」です。型紙を使い、革のクセや縮むことを考えて、大きめに裁断します。
2. シボ出し
裁断した革を油でもみ、「シボ」と呼ばれるシワを作ります。もむことで、革が本来持っているシボが出てきます。
3. 型押し
絵柄をデザインした型を革に押します。型押しをすることで、絵に立体感が生まれ、手にフィットしやすくなります。絵柄はさまざまな種類があります。昔は木型で型押ししていましたが、現在は金型を使うのが一般的です。
4. 色塗り
型押しして生まれた絵柄に、筆を使い、顔料を塗ります。塗り方にもぼかしやべた塗り、二度塗りなどの技法があります。
5. さび入れ
乾くのを待ってから、絵柄やシボが浮き立つように、「さび」と呼ばれる漆・顔料を刷り込みます。その上から、表面の保護と防水、汚れ防止に仕上げのニスを塗ったら生地の完成です。天候や気温、湿度にもよりますが、条件がそろっても4日間ほどかかる作業です。
生地が出来上がったら、本裁ちをし、縫製に入ります。
姫革細工の魅力
姫革細工の魅力は、なんといっても真っ白な革の美しさです。タンニンなどを使ってなめした革と異なり、光に当たるとさらに輝き、白さが増すといわれています。白くなめした革に施された、立体感のある華やかな絵柄にも、目が奪われます。
出典:毛皮専門店エルベート
古典的な柄から現代的な柄まで、豊富な絵柄があるので、年代を問わず使うことができます。手に持つとしなやかで、しっとりした革の感触が手になじみます。デザインの美しさと相まって、一度持つと手放せなくなる人も多いそうです。
見た目の美しさだけでなく、実用面も高いのが姫革細工の魅力です。現在も剣道の防具や馬具に使われるほど、軽く丈夫なのはもちろん、表面がコーティングされているので、白色でもそれほど汚れが目立ちません。
お手入れ方法も、革用のクリームを塗りこむ、濡れたときは乾いた布でふき取るなど、一般的な革製品と同じで難しいものではありません。むしろ毎日使う方が白さを保つことができ、表面に渋いツヤが出てくるといわれています。
使い込むことで色に深みが生まれるため、愛着のある品になりそうです。
プレゼントに使いたくなる
姫革細工の白い革と、鮮やかな絵柄は、ポーチやバッグ、お財布、名刺入れ、扇子入れ、眼鏡ケース・・・女性へのプレゼントはもちろん、華やかさもあるので、結婚式の引き出物、お祝いの品にぴったりです。古典的な柄は、海外の友人へのプレゼントとしても喜ばれそうです。
日常を彩る。姫革細工
姫革細工は、光に当たるほど輝くという稀有な性質と、型押しによって生まれる絵柄の立体感が見事な工芸品です。伝統工芸品というと、なんだか触れるのがもったいないような高級なイメージがあるかもしれません。
ですがむしろ、使うほどに色ツヤが生まれ、愛着が持てるのが伝統工芸品のすばらしさです。姫革細工も例外ではありません。毎日使うことで、渋みが生まれ、白さを保てます。手触りもよく、軽くて丈夫なので普段使いにもぴったりです。
姫路だけで生産される姫革細工、ぜひ手にとってその感触を確かめてみてください。