加賀ゆびぬきとは、かわいらしい大きさ、そして絹糸による美しい模様が魅力の、金沢の工芸品のひとつです。
金沢は「加賀百万石」といわれた加賀藩の城下町にあたり、加賀友禅、九谷焼、金沢漆器など、「石を投げれば作家(職人)にあたる」といわれるほど、昔から伝統工芸が盛んでした。
加賀ゆびぬきは、そんな金沢で、お針子さんの道具として生まれた工芸品です。
ものづくり盛んな金沢で生まれた工芸品・加賀ゆびぬき
加賀ゆびぬきの魅力は、一針一針、糸をかがって生み出される、繊細な模様と華やかな色彩にあります。
幾何学的な模様は、掛け合わせ方によって多種多様で、糸の色や配置が違うだけで違う表情が生まれます。ころんとした、手のひらで転がせるほどのかわいらしい大きさですが、糸が紡ぎだす細かな模様は、飽きずに見ていられるほどの美しさです。
ゆびぬきはお裁縫道具のひとつ
ゆびぬきは英語でいうところの「シンブル」と同じ意味を持つ、お裁縫の道具のひとつです。「指貫」や「指ぬき」と表示されることもあり、縫物をするときに針の頭を押して縫い進めるために、指にはめて使います。
ゆびぬきの形は輪やキャップ式などがありますが、加賀ゆびぬきの場合は、輪っか状になっているのが特徴です。指のサイズに合わせた土台となる輪に、真綿を巻き締め、絹糸を掛け合わせて、模様をつくりだします。
始まりは、お針子さんの仕事道具だった
加賀ゆびぬきは、元々加賀友禅の着物を仕立てる、お針子さんたちの仕事道具として作られたのが始まりといわれています。
高級着物である加賀友禅では、着物の柄つけの染め色に合わせ、糸を変えて仕立てるため、余り糸が出ることがありました。余り糸も、貴重な糸には変わりなく、お針子さんたちは大切に保管し、お正月のようなお休みを利用して、ゆびぬきに仕立てたのだそうです。
お裁縫道具に使われたことから金沢では、「お裁縫がうまくなりますように」と願いを込めて、嫁入りの道具に持たせたり、旧家ではお雛様の飾りに使ったりすることもあったそうです。
加賀ゆびぬきの使い方
加賀ゆびぬきには、さまざまな使い方があります。通常通りゆびぬきとして使う場合は、中指もしくはほかの指の、第二関節あたりにはめて使います。
加賀ゆびぬきは、自分の指に合わせた大きさにできるのと、土台に真綿をしっかり巻いてつくるので、裁縫をするときに針を通しにくく、指の保護に最適です。特に和裁をする人に扱いやすいということで人気があります。
アクセサリーとして身に着ける
見た目の美しさが魅力の加賀ゆびぬきは、お裁縫以外にもペンダントトップや指輪など、アクセサリーとして身に着ける人も多いです。
着物を着る機会があるなら、帯留めとしてワンポイントに使うという方法もあります。絹糸の光沢や模様、色使いは着物とも相性ピッタリです。小さめの加賀ゆびぬきなら、重ねて使うのも素敵です。
こんな風に、ストラップや根付にアレンジするのもおすすめです。
インテリアとして飾ることも
そのままでも十分魅力的な加賀ゆびぬきは、置物として飾っても素敵です。数が増えるほど、お部屋も明るくなりそうです。
加賀ゆびぬきを体験する
自分で実際に加賀ゆびぬきを作りたい、という方は体験レッスンの受講がおすすめです。
金沢市にある『加賀てまり 毬屋』では、オリジナルの加賀ゆびぬきのワークショップ(予約制)が行われています。
ワークショップでは、自分の指のサイズに合わせて土台の輪をつくり、基本の糸のかがり方を教えてもらえます。模様は2種類から選ぶ形になりますが、土台の布や糸も選べるので、色の幅、配色によって世界に一つだけのオリジナルが作れます。体験は2時間ほどなので、1日あれば受講できます。
ただし、加賀ゆびぬきはひとつ仕上げるのに5~10時間ほどかかるため、基礎を学んだあと、仕上げは自宅で行うことになります。細かい作業で完成まで時間はかかりますが、糸と糸とが組み合わさり、模様が生まれる瞬間は、特別なものになるでしょう。
<加賀てまり 毬屋の詳細情報>
所在地:石川県金沢市南町5-7小出南ビル2F
営業時間:9:30~18:00
定休日:火・水曜日
体験料金:2,800~3,000円
体験時間:約2時間(要予約)
申込方法:電話またはメールで受け付け
お問い合わせ:076-231-7660
集めたくなる、作りたくなる、加賀ゆびぬき
元々は仕事道具として生まれた加賀ゆびぬきですが、絹糸が持つ光沢や細かな細工は、他の伝統工芸品と同じく、芸術作品と呼ぶにふさわしい品が感じられます。
糸の配色や配置によって、一つ一つの印象が異なる加賀ゆびぬきはついつい集めたくなってしまいます。
ハンドメイドがお好きな方は、ぜひ自分のサイズで、オリジナルの加賀ゆびぬきにも挑戦してみてはいかがでしょうか。