愛媛県西条市は、地下水が豊富で、日本でも珍しく町のあちらこちらで地下水が自噴しており「水の都・西条」と呼ばれています。そして地下水は「うちぬき」と呼ばれており、水を汲みに来る人の姿を見かけます。
うちぬきの水はまろやかで、おいしく名水百選にも選ばれています。そんな西条市の「うちぬき」についてご紹介します。
うちぬきとは?歴史について
うちぬきとは、旧西条市の一体にある地下水が自噴する井戸のことです。とても浅い場所からでも自噴する特徴があり、場所によっては水管を差すだけで湧き出ます。
昔は鉄の棒を地面に打ち込んで、くり抜いた竹をさして自噴する水を確保したことから「うちぬき」と呼ばれました。江戸時代から昭和の初め頃まで受け継がれてきた方法です。
市内には約3000本ものうちぬきがあり、自噴しなくても簡単な井戸ポンプで十分な水質の水が出ます。そのため、西条市街地では水道の必要がない地域が多い、珍しい地域になっています。うちぬきの水は、生活用水、農業用水、工業用水に広く利用されています。
西条市うちぬき水の水汲み場「利き水」
こちらは、西条市総合文化会館のそばにある「うちぬき」です。整備されていて、誰でも汲むことができるので、遠方からわざわざ汲みに来る人がたくさんいます。
うちぬきの水は、いろいろな良い条件が重なってとてもおいしい水になっています。石鎚山からの伏流水なので、天然の濾過作用できれいであり、水温の変化が少なく年間を通して13度~14度であり、口当たりまろやかな軟水です。
カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分は少なく、ナトリウムが豊富でほのかな甘みがあると言われています。うちぬき水でつくったコーヒーはおいしいと市内にはコーヒー自慢のカフェが多いです。また、かき氷も絶品です。
↑水汲み場の近くでは川の中から勢い良く水が吹き出して、天然の噴水状態になっています。
名水百選記念「うちぬき広場」
うちぬきは、名水百選に昭和60年に環境庁から制定されました。名水百選に選ばれたことを記念して「うちぬき広場」が作られました。記念の石碑とうちぬきがあります。
海から湧くうちぬき「弘法水」
弘法大師の伝説のある「弘法水」も有名なうちぬきです。四国巡礼の途中に老婆から水をもらった弘法大師。老婆はわざわざ遠くへ水汲みに行かなければならないという話を聞いて、大地を杖で突くときれいな水が湧き出したという伝説です。
弘法水が出るのは、なんと海。西条港の海の中です。こんな海の中に真水がでるのか?と不思議になります。
船着き場の中に小屋の中に弘法水があります。中では、勢い良く水が沸いていました。
飲んでみると、とてもおいしい水です。水道水のようなカルキ臭は全くなく、柔らかい口当たりです。もちろん塩味も全くしません。ペットボトルに汲んで帰りました。おいしい水で丁寧にコーヒーを入れたいと思いました。
うちぬき弘法水の歴史
弘法水は江戸時代は木枠で湧水を溜めて、干潮時に住民や船乗りが汲んでいいたそうです。その後昭和30年代に、一旦なくなっていたものの、1979年の工事の際に石碑を発見。この辺じゃないかと見当をつけてパイプを差し込むと水が出たそうです。
西条市うちぬきマップで名水めぐり
いかがでしたか。湧水だけでなく、西条はそこかしこにある水がとても美しい町です。そしてご紹介した以外にもたくさんの「うちぬき」の名水スポットがあります。JR西条駅プラットフォームや観音水、嘉母神社や加茂川左岸など、散歩がてらの「名水めぐり」も楽しいです。
西条水めぐりマップ
↑クリックするとPDFのマップが見れます。参照:西条市役所 環境衛生課
「名水めぐりツアー」などもありますので機会があったら、西条の町を訪ねておいしい水を楽しんでみてはいかがでしょうか?
文・写真/あかつき