今回ご紹介するのは、奥能登で江戸時代から続く伝統製塩法、揚げ浜式塩田で作られた塩です。
奥能登、と呼ばれる石川県輪島市から珠洲市などの地域では、古くから塩づくりが営まれてきました。「塩の道」と呼ばれるほど、今も海岸沿いには塩田が点在します。
塩は普段の食卓でも欠かせないもの、自分好みのこだわりの塩を見つけてみませんか?
揚げ浜式塩田による塩づくり
<塩の製法は入り浜式や流下式などいくつかあり、揚げ浜式もそのひとつです。奥能登で行われている揚げ浜式製塩は、作り方が約500年前からほとんど変わっていないのだとか。
日本で唯一奥能登で行われ、江戸時代から続く揚げ浜式製塩方法は、国の重要民俗文化財にも指定されています。
海水をくみ、撒いて砂を集めてかん水をとる・・・「潮汲み3年、塩撒き10年」といわれるほど地道な作業を繰り返す揚げ浜式塩田は、「手塩に掛ける」という言葉の語源でもあるそうです。
<揚げ浜式製塩法>
①肩荷棒をつかって人力で海水をくみ上げ、引桶(しこけ)という大きな桶にためます。
②ある程度桶にためたら打桶(おちょけ)と呼ばれる紡錘状の道具で海水を塩田にまきます。
③太陽にあてて数時間乾かしたら、一度塩田の中央に集め、タレフネと呼ばれる木製の木箱に砂を入れます。
④タレフネの中にムシロを敷き、海水を流し込んで砂のついた塩の結晶をため池にためます。たまった水はかん水と呼ばれ、塩分濃度は20度ほどの塩のもとになります。
⑤かん水を窯にうつして、数時間荒炊きします。
⑥一日ほど冷ましてから、ろ過し、今度は本炊きと呼ばれる煮詰める作業に入ります。
⑦炊き詰めていくと、塩の結晶が出てきます。タイミングを見計らうことや、ちょうどいい火の調整をすることで、味の違いが生まれます。
⑧炊きあがった塩を取り出し、4日間寝かせてにがりを切ります。
⑨不純物がないかチェックして、できあがりです。
出典:株式会社奥能登塩田村
揚げ浜式塩田でつくる塩の特徴
揚げ浜式塩田では、約600mlの海水から120㎏ほどの塩しかとれないそうです。
手間暇かけて生まれる貴重な塩は、その分味も抜群です。カリウムやマグネシウムなどの必須ミネラルを多く含み、自然な甘さが特徴です。ナトリウムが一般的な食塩より少ない傾向にあるため、塩の味を楽しみつつ減塩対策にもつながります。
揚げ浜式塩田の体験や塩の購入ができるお店
塩の駅「輪島塩」
塩の駅「輪島塩」は輪島市の海岸沿いにあり、輪島から珠洲方面へ向かう途中の、最初の塩田ともいえる場所です。店内からはタイミングが合えば海の向こうに七ツ島や夕日を望むこともできます。
塩の駅「輪島塩」があるあたりは、三ッ子浜海岸と呼ばれ、昔から冷泉がしみでていると言い伝えがある場所だそうです。そこで作られる輪島塩は、まろやかで素材の旨味を引き立てます。
特に赤い色が特徴の輪島塩は、製塩の途中でたまたまできる色合いで、ミネラルがたっぷり、甘みが強いのが特徴です。常に購入できるものでもないため、気になる人はお店に問い合わせみてください。
潮の駅「輪島塩」は、焼き塩やにがりをはじめ、塩関連のお菓子や海産物も販売されています。予約制ですが、塩づくりや塩のブレンド体験なども行われています。
<塩の駅「輪島塩」の詳細情報>
所在地: 〒928-0231 石川県輪島市町野町大川ハ17番2号
営業時間:8:00~17:30
定休日:3~11月毎日営業、12~2月土日祝日のみ営業
お問い合わせ:0768-32-1177
交通アクセス:能登空港から車で約40分
道の駅「輪島ふらっと訪夢」から車で約20分
「穴水IC」から車で約40分
URL:https://www.wajimashio.jp/
道の駅すず塩田村
道の駅すず塩田村では、塩はもちろん、道の駅として地場産品の販売も行われていてお土産選びも楽しめます。塩の資料館もあり、塩づくりの歴史や世界の塩文化、塩野意外な使われ方などの展示が行われています。予約をすれば塩づくり体験もできます。仁江海岸を一望できる絶好のスポットで、開放的な気分も味わえます。
<道の駅すず塩田村の詳細情報>
所在地:〒927-1325石川県珠洲市仁江町1字12-1
開館時間:揚浜館9:00~17:00(入館は16:30まで)
体験学習14:00~16:00(所要時間約90分/期間は5/1~9/30まで)
休館日:通年営業(年末年始も開館)
入館料:大人100円、小中学生50円
体験学習は1人につき500~3,500円
お問い合わせ:0768-87-2040
交通アクセス:能登空港から車で約40分
道の駅「輪島ふらっと訪夢」から車で約30分
金沢から車で、のと里山海道~珠洲道路にて輪島経由で約2時間半
URL: http://www.okunoto-endenmura.jp/
珠洲製塩
珠洲製塩では、「昨日よりもおいしい塩を作る」を掲げ、揚げ浜式塩田製塩法以外に、昭和初期以降確立された流下式塩田製塩法でも塩づくりが行われています。
製塩所では塩野直売だけでなく、塩づくりの見学もできます。オンラインショップもあり、塩をはじめにがりや、やきしお、塩あめを購入することもできます。
<珠洲製塩の詳細情報>
所在地:石川県珠洲市長橋町13-17-2
お問い合わせ:0768-87-8080
URL:http://suzuseien.jp/
塩なのにまろやか!自分好みの塩が見つかるかも
輪島から珠洲にかけてつながる塩の道では、ほかにも製塩所がいくつか点在します。製塩所ごとに味が違うのはもちろん、揚げ浜式以外の製法、流下式や平釜式で作られた塩、ブレンド塩なども販売されているので、さまざまな塩の味を楽しめます。
一口に塩といっても、味の好みはさまざま。揚げ浜式はもちろん、ほかの塩も食べ比べして、ぜひ自分好みの味を見つけてみてください。