「神出鬼没の大泥棒、怪盗アルセーヌ・ルパンまたも白昼堂々宝石を奪取」などという例文で用いる「神出鬼没」。よく見かける言葉ですし、その意味はなんとなくわかるでしょうが、言葉の由来まではご存じではない方が多いのではないでしょうか。
今回は「神出鬼没(しんしゅつきぼつ)」という四字熟語の意味や由来、例文まで詳しく紹介していきます。
神出鬼没の意味
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神出鬼没のように、教わらなくても普通に使っている言葉は、意味を詳細に説明しようとすると、意外と難しいものです。神出鬼没は、「鬼神のように、現れたり消えたり自在で、その居場所がつかめないこと」という意味の四字熟語です。
鬼神(きしん・きじん・おにがみ)は人間を超越した存在をいいます。鬼神の行動範囲は人間の生息する次元にとどまりませんので、どこからでも自在に現れて、消えることができるわけです。
このように、神出鬼没は超人のなせる業であり、この四字熟語を人に対して使う場合でも、できれば超人的な行動を見せる人に対して使いたいものです。
単に居場所が掴みづらく、どこに現れるかわからない程度の人間にも使っていけないわけではありませんが、鬼神に対していささかおこがましい用法かもしれません。
「そんなところに守っていたとは、イチロー選手の外野守備は神出鬼没だ」というように用いるなら、具体的な超人性が表れている用法ではないでしょうか。
神出鬼没の由来
神出鬼没は故事成語、つまり昔の中国に由来を持つ熟語です。
前漢の英雄、皇帝武帝の時代、つまり紀元前1・2世紀頃になりますが、その時代の思想書「淮南子」(一般的には「えなんじ」と読みます)の第15巻、「兵略訓」が原典です。
淮南子は、道家思想に基づく兵法哲学の書とされており、そこに用いられた神出鬼没は、用兵に長けている者の行動を評価した言葉です。
現在では大泥棒にも使われますが、もともとは戦場において、戦いが得意な軍師への褒め言葉として生まれたのです。
軍師のあやつる軍の自在振りを評した故事成語ですが、特に教訓などはありません。
神出鬼没の例文
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「白い覆面に白いマント、神出鬼没の正義の味方、月光仮面」「アラビアのロレンスこと、英国軍トーマス・エドワード・ロレンスは、ヒジャーズ鉄道を神出鬼没に攻撃するゲリラ戦術を採り、オスマン軍を大いに悩ませた」などの例文に見られるように、「神出鬼没」とは、一体どこに現れるか、一般人には分からず、想像もできない超人的なさまを指します。
神出鬼没に出現する能力を最大限に発揮する人間は、まさに鬼神に近い超人です。それはルパンのような大泥棒であり、月光仮面のような謎のヒーローであり、そして現代の戦争においてはゲリラ部隊であるわけです。
神出鬼没の類語・対義語
神出鬼没の類義語にはなにがあるでしょうか。「縦横無尽」「自由自在」「融通無碍」などが挙げられます。自在な行動を意味するという点で、これらの熟語はよく似ています。ただし、これらの類語には、行動する側の動きそのものの自在性を客観的に評しているニュアンスがあります。
他人から見たときの圧倒的な驚きを含めている、神出鬼没という四時熟語とは、やや使うシーン、使われる角度が異なるかもしれません。
いっぽう、神出鬼没の対義語はどういったものでしょう。どこに現れるのかが容易にわかるという意味ですから、「予想内」「想定内」「予測範囲」「読み通り」などが該当するでしょう。
あまり面白そうな言葉は見られませんが、予測できる行動は決して面白いものではないので、これは仕方ないことかもしれません。