美しい生音を響かせるピアノですが、これらの音は全て人の手によって作られています。そんな、ピアノの命である音を手がける「ピアノ調律師」についてご紹介していきます。
ピアノ調律師とは
ピアノ調律師とは、ピアノの音を調律する職業です。ギターやベースなどは自分の手でチューニングできるように作られており、チューナーという音を合わせるためのツールも存在するので誰でも容易に音を調整することができます。
しかし、ハンマーが弦を叩くことによって音が鳴るピアノの内部構造は複雑なものとなっており、内蔵されている弦は200本以上にも及ぶため調律師による専門の技術力が必要です。
また、ピアノの調律師というのは「ピアノの専門家」でもあり、その守備範囲は広く調律以外の修理に至る部分まで請け負うことがあります。
ピアノ調律師になるには
技術の学び方
ピアノ調律師になるためには、基本的に専門の学校に行きます。調律を扱う音楽大学や専門学校などの養成機関でピアノの修理や調律を学び、実際に技術を習得していきます。
ピアノ調律師に資格制度はなく、専門学校卒業後に楽器店や調律を専門にしている会社や、ピアノの製造・修理会社に就職し、そこで修行をしながら一人前の調律師を目指していくという形をとるので、見習いと調律師の明確な境界線はありません。
日頃から気をつけること
ピアノ調律師には技術力の他にも音を聞き分ける繊細な耳が必要となってくるので、大きな音を長時間聴くことがないようにし、できるだけ耳の劣化を防がなくてはなりません。そのため、ヘッドフォンなどの使用をできるだけ控え、耳への負担を減らすことが求められます。また、日頃から良質なピアノの音を聴き、良い音を知っておくことも重要です。
ピアノ調律師の適正
年齢
人間の視力や聴力は20代前半にピークを迎え、30代を超えると徐々に低下する傾向にあるので、技術習得に関しては20代半ばまでに始めておくことが勧められます。そのため、中には入学の際に25歳以下といった年齢制限を設ける養成機関も存在します。
身体
調律する姿勢の問題で大体150cm以上の身長が求められることになります。さらに調律をする際に1オクターブ離れた音を同時に鳴らす作業が必要となってくるので手の大きさ・広がりもある方が良いです。
また、調律にはある程度の力が必要です。調律は常に身体全体を使って行われるため、それをこなすための筋力と体力はあればあるほどいいです。
性格
ピアノ調律はとても繊細な仕事なので、几帳面で集中力があり、細かい作業が好きな人が向いています。また、演奏することよりも楽器の構造や音が好きだという人にも適しています。
さらに、調律師になるとユーザーの思い通りの音に仕上げないといけないので、お客様からの要望を漏らすことなく細かく引き出す能力が求められます。つまり、一定のコミュニケーション能力が必要となってくるのです。
絶対音感は必要?
ピアノ調律師と聞くと「絶対音感が必要なんじゃないのか?」と考える人も多いと思います。しかし、実際には絶対音感は必須ではなく、後天的に身につけることができる相対音感でまかなうことができます。
相対音感とは、一音だけを聴いてその音程がわかる絶対音感とは異なり、その音がある基準音からどれだけ離れているか(高いか低いか)がわかる能力を指します。これは専門学校などでも会得することができます。
ピアノの調律師は基本的に基準音を設けて調律していくため、相対音感があれば絶対音感は必要ありません。
ピアノ調律師の年収/勤務体系/福利厚生
ピアノ調律師は、長期の修行によって会得した技術力を発揮して手作業で調律していく一種の「職人」です。その待遇は社員数の限られた小規模な会社と同じくらいのところが多く、さらに大抵は見習いから入るのでその給与は微々たるもので初めのうちは20万円を超えないところが多いです。
「それでも技術を習得してピアノ調律師になりたい」という強い気持ちを持った人が一人前のピアノ調律師になっていくのです。
ピアノ調律師の現状
ピアノの需要は年々低下してきています。これは、調律の必要がない電子ピアノの普及や、そもそもこの不景気な時代、我が子に就職の役に立たない音楽を習わせるよりも塾に通わせる方が生産的であるという思いからくるものだと考えられます。
さらには、ピアノ調律師の養成機関を卒業して無事に就職できても、就職先の待遇の悪さや長い修行期間への不安から早々にやめてしまう人も多いです。
なかなか厳しい現状ではありますが、それでも限られた人にしかできない仕事なのでやりがいが大きいです。職人と呼ばれる人たちは皆、自分たちの技に誇りを持って仕事をしています。
ピアノ調律師も例外ではなく、いい音を出すという強い気持ちを根底において持てる技術をつぎ込んで行きます。自分が社会においてしっかりプライドを持って人に誇れるような仕事をしていければ素敵ですよね。
もしピアノが好きで何かピアノに関わる仕事がしたいと考えているならば、ピアノ調律師も視野に入れてみてはいかがでしょうか。