桐生織とは群馬県桐生市の織物産業です。長い歴史と伝統があり、織物が出来上がるまでの7つの技法は国の伝統工芸品に指定されています。古代より伝わる織物を紡ぎ継承してゆく役割を果たす桐生織職人の仕事と、それを目指すにはどうすればよいのか、またその将来性を見い出すことはできるのでしょうか。
「桐生織」ってどんなもの?
初めに桐生織について知りましょう。
桐生織の歴史は古く1300年前の奈良時代に始まったと言われています。新田義貞の旗揚げや関ヶ原の戦いで徳川家康が桐生絹で軍旗を作ったことで名声を高め、江戸幕府の保護もあり高級織物を生産します。明治以降は世界中に輸出されるまでに発展し、昭和の中ごろまで京都の西陣織と並んで日本を支えた伝統ある織物です。
桐生織職人の仕事と求められるもの
織職人の仕事は単に織物を織るだけではなく、織物ができあがるまでの一連の様々な工程が仕事になります。製糸から始まり染色や撚糸、意匠(デザイン)などを経て機織り、補修作業までいくつもの工程があるため伝統の技術と最新技術、デザインや染色の知識を学ぶことになりますのでそれらを学び習得するには一定期間の修行が必要となります。
また、一昔前のように織物を生産すれば売れるという時代ではなくなっているため、職人自らお客と接する機会を持つことも大切な仕事です。例えば全国で開催される伝統工芸展や和服の販売店で、自社の製品を販売する。さらに独立を目指す場合や工房の運営に携わるのであれば、ファッションやデザインだけでなく経営やマーケティング、販売に関する知識なども備わっていたほうが良いでしょう。
桐生織職人になるには
桐生織職人になるには特別な資格は必要ありません。まず先に桐生の織物会社や繊維会社に就職し働きながら技術を学んでいく人もいれば、服飾(ファッション)関係や美術系の大学・短大・専門学校に進学した後に就職し学んでいく方法もあります。
また、高等学校なら桐生織の地元である桐生市に桐生工業高校があります。こちらの高校の染色デザイン科では染色や織物に関するデザイン・染色技術の基礎やハイテク技術の基礎などを学ぶことができます。
いずれにしても現場での知識と技術の習得には10年前後を要することになりますので、その期間を無事に終えて修行先で認められれば一人前の職人ということになります。
桐生織職人の収入
桐生織職人だけでなく技術職全般にいえることですが、一人前になるまでには何年もの時間がかかります。そのため仕事といっても見習いであり、職場は技術習得のための学びの場です。
勤務先の規模や雇用形態、どのような技術を学ぶのかにもよりますがひと月に稼げる金額は13~16万円程度(800円のアルバイト見習いスタートから、月16万円の年間休日112日の求人まで様々、時期によっても変動)なので「桐生織が好きでそれを学びながら収入が得られる!」と思える位でないと、長く続けるのは難しいかもしれません。また指導者となる職人さんとの相性も大きいと思います。
しかし、独立し自分の工房を持てるようになれば、販売戦略次第では世界のマーケットへ挑戦することも可能ですので、大きな収入を得ることも夢ではないでしょう。