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北海道には梅雨が無い?
真っ白な雲を浮かべた爽やかな青空が、何処までも続く平原の先の地平線と繋がって見えるように、広大な面積を誇る北海道に魅力を感じる方は少なくないでしょう。日本国内だけに留まらず国籍を超えて多くのファンを持つのが北海道です。
実は北海道で最も過ごしやすい季節は、日本列島に梅雨前線が接近しジトジトと長雨を降らせる梅雨の季節、初夏です。「北海道には梅雨が無いこと」を北海道の大きな魅力の1つとして捉える方は、少なくないと言えるでしょう。
日本各地が雨と湿度に悩まされる梅雨の季節は、北の大地である北海道では自然が力強さを取り戻す季節として多くの観光客が北海道に足を運ぶ季節でもあります。
なぜ北海道には梅雨がないのか?
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毎年のように日本列島に長雨をもたらす梅雨の季節は鬱陶しいものです。しかしこの時期に雨が少ないと水不足に陥ってしまいますから、恵みの雨だとも言えます。
梅雨の長雨をもたらす梅雨前線は、北から南下してくるオホーツク海高気圧と南から北上する太平洋高気圧の間の南方で発生します。北からの冷たい風と南からの暖かい湿った風が衝突し、雲を作り雨を降らせます。
梅雨前線に影響を及ぼす2つの高気圧の勢力は拮抗しているので、梅雨前線はゆっくりと北上しながらも長期間日本列島上空に居座り続けます。この期間が梅雨と呼ばれる季節です。オホーツク海高気圧の影響を強く受ける北海道は梅雨前線の影響を受けづらい場所に位置しています。
梅雨前線は日本列島上空で勢力を弱めた後に、北海道にも到達しますが、既に勢力も弱まり速度も上がっているので、北海道に長雨をもたらすことなく消えるかオホーツク海に抜けていきます。このため、北海道には梅雨が存在しないと言われています。
温暖化と北海道の梅雨
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地球の平均気温が上昇する温暖化問題は、既に様々なところに影響を及ぼしていると考えられています。空気は温まるとより多くの水分を含み高温多湿な状態になります。
地球温暖化の影響を受け季節を問わず高温多湿な状態の地域が増えることで、日本列島上空に停滞する梅雨前線の勢力が強くなり梅雨は長引き、雨量も平均で20%程度増加するのではないかと考えられています。
梅雨前線が北上を続けながら勢力を弱めることで北海道は梅雨前線の影響を受けることが無かったのですが、今後地球温暖化が進み平均気温が上がっていくと北海道を梅雨前線から守っていたオホーツク海高気圧も現在より温度が上がり、梅雨前線を押し留める力が弱くなる可能性があります。
また梅雨前線の勢力が今以上に強くなれば、北海道到達時に雨を降らす力を残すことも予想され、北海道が梅雨前線の影響を受ける可能性は低くないと考えられます。
蝦夷梅雨とは
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一般的には梅雨前線の影響を受けることのない北海道には梅雨がないと考えられていますが、梅雨前線の影響が全く無いのかというと実際には全く影響がないという訳でもありません。年によっては6月中旬~7月中旬の期間に1~2週間ほど天候を崩すことがあります。
主に釧路や根室などの北海道の道東地方の太平洋側で見られるこの現象は蝦夷(えぞ)梅雨と呼ばれ、オホーツク海高気圧から冷たく湿った空気が流れ込むことで発生する現象だと考えられます。 蝦夷梅雨の名称は北海道の旧名が蝦夷であったことに由来すると言われます。
梅雨前線に影響されるものでないことから気象庁では梅雨として定義しておらず、オホーツク海高気圧からの冷たい風が吹き込むために蒸し暑いこともなく、降雨量も本州の梅雨と比べると半分以下、パラパラと降っては止んでを繰り返します。
北海道は梅雨がなくても大丈夫なのか?
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年によっては蝦夷梅雨の現象で一部地域に雨が降るものの、一般的に北海道には梅雨が存在しないと言えます。日本列島の他の地域では梅雨がないということは水不足の可能性が危惧されますが、冬季に豊富な降雪がある北海道では問題無いようです。
地球温暖化の問題は世界的に問題視されているものの、現在のところ日常生活に直接的な影響がないことから問題の深刻さを体感することは余りありません。
しかし、本来梅雨が存在しない北海道にも梅雨前線の影響が出ることが予想されるというのは、具体的に地球温暖化の問題を考えるきっかけになるのではないでしょうか。一人一人の心掛けが梅雨前線の北海道進出を食い止めると言えます。