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春雨が降る
空はまだ 名前を持たない色
山はゆっくり
輪郭を 手放していく
木々の先から 透明な糸
世界はやわらかく ほどけて
レンズの奥に
もうひとつの山が息をする
雨粒が 時間を薄め
わたしの影は みなもで揺れる
写らないものの方が
多いと知りながら
いま ここで見える光を
そっと 胸に集めて
シャッターを切る
一瞬だけ 世界が止まる
記憶になる 光の欠片
濡れた若葉の匂い
霧に溶ける遠い峰
息を吸うたび
わたしは 春になる
存在が 少し透けて
山とわたしの境目が
曖昧になっていく
音はやがて
白い光へと変わり
鼓動さえ やわらぐ
シャッターを切る
けれど 閉じこめられない
この無垢な 透明
自然の摂理に従い
ただ 見つめるまま
境目はほどけ
名前も輪郭も
雨に溶けて
光だけが
やわらかく ひらく
わたしは